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『カメラを止めるな!』パクリ騒動の背景に、インディーズ映画業界のナアナア体質

「やりがい搾取」と言えばそうなのだが…

 では、Sさんが企画書や脚本を執筆したその企画がもし実現していたら、あとから権利契約や報酬の支払いはされるのだろうか。 「口約束しか交わしていない場合、企画段階から参加した映画が公開まで至ったとしても、いったんはずれたら契約や報酬について先方から申し出られることはないでしょうね。ただ同じ界隈にいる人間として製作費を回収するだけで精一杯なのはわかっていますから、SNSで自らの周囲に向けて、制作に携わった実績をアピールできるだけで十分です。何かの間違いで大ヒットなどしない限りはね

 “大ヒットなどしない限りは”を強調してSさんはさらに話を続けた。 「ただ、FLASHに書かれている“何の権限もない劇団関係者に伝えたことで許諾をとったつもりだった”というプロデューサーや監督側の考えもわからないでもないです。正式に許諾をとろうとして、いい流れで進んでいる企画に水を差されたくはないですからね。  製作費が少ない中、ナアナアでできるならそれでやり過ごしたいし、この世界ではそれが通っていた。別物であると言い訳できる自信があれば、僕が監督でもそうしていたと思う」  この騒動は、あいまいな契約関係でやりがい搾取が横行しているインディーズ映画業界の中で、起こるべくして起こったことなのではないだろうか。

裁判に発展する可能性も

 ヒットした要素は上田監督自身が考えたものだとしても、件の劇団の構成やアイデア、協力がなければこの映画は生まれなかった。  舞台の映画化という同じ希望を持ち、もし手弁当同然で企画に協力していたのだとすれば、その後蚊帳の外で映画化が進み、結果大ヒットした今、一言モノ申したくなるのは自然だろう。  ただ、低予算映画でも許諾や契約関係の手続きを丁寧に行い、報酬も相当な現場がある事も事実だ。  今後、裁判に発展する可能性もあるため、真実はそこで明かされるだろうが、映画『カメラを止めるな!』のように関係者すべてが笑顔になるラストになるよう、私たちは祈るばかりである。<取材・文/日刊SPA!取材班>
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