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『カメラを止めるな!』パクリ騒動の背景に、インディーズ映画業界のナアナア体質

 この夏、SNSを中心に大きな話題を集めた映画『カメラを止めるな!』。製作費は300万円、スタートは都内2館のみという、いわゆるインディーズ映画だったこの作品が、あれよあれよという間に大ヒット。上田慎一郎監督も話題の人として多くのテレビ番組に引っ張りだこになり、興行収入もいまや12億円を突破した。
カメラを止めるな

(C)ENBUゼミナール 

 そんな中、『カメラを止めるな!』を製作するにあたって上田監督の着想の元となった舞台の劇団主宰者が、「この映画は自分の作品を無断でパクった」と週刊誌『FLASH』(9月4日号、11号)で告発し、大騒動となっている。

「契約なし」もタダ働きも普通のインディーズ映画業界

 原案か、原作か――。  あくまで「原案」であるというと言う配給元ら監督側に対し、「原作」だと主張する告発者側の言い分は対立しているが、公開当初は好意的だった告発者が大ヒット後に手のひら返しをしていることや、構成部分が似ている程度の「酷似」であることなどから、現段階では多くの世論が監督側支持に傾いているように見える。 FLASH その一方で、多くのインディーズ映画に携わる監督・脚本家のSさんは「自主映画業界の沼に浸かっていると明日は我が身です」と語る。 「契約や権利関係が不十分なままで映画製作が進むのはよくあることです。だから、どちらの言い分もわからないでもない」 『カメラを止めるな!』が低予算で作られたように、インディーズ映画と呼ばれるものはそのほとんどが低予算で製作されている。それだけに携わるスタッフも、特段な契約をかわす間もなく、わずかなギャラや無報酬覚悟で参加するのが当たり前となっているのだという。 「公開はもとより、まだ製作さえ決定していない映画に“力を貸してくれ”と言われても、いちいち書面はかわしませんよ。したとしても口約束くらい。相手との関係性でいつのまにかどっぷり参加していることもある。ギャラを払う発想がない奴もいたり、役者もノーギャラを条件に出演してもらっていることもザラです」  Sさんは過去、知人の監督に頼まれ、ふたりで企画書を数週間にわたって練り、脚本も執筆したが結局コンペは通らず、執筆料は一切支払われないということがあったという。  しかしSさんは「フリーの宿命でもあるし、この業界は持ちつ持たれつだから仕方がない」と、諦めている様子。  実際に、『カメラを止めるな!』もFLASHによると、上田監督が映画化企画を持ち上げ、劇団関係者と企画を進めるも一旦は頓挫したという経緯がある。 「いちいち要求して面倒くさい奴認定されて敵を作るより、将来的に金が出る現場に自分を呼んでくれればそれでいいですから。やりがい搾取と言われればそれまでだけど、今後のいい関係性と希望が報酬のようなものです」
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「やりがい搾取」と言えばそうなのだが…
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