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目が見えない美しい妻が手術後、初めて見た夫の顔は…映画『かごの中の瞳』

~藤沢数希のモテる映画工学『かごの中の瞳』~

かごの中の瞳

©2016 SC INTERNATIONAL PICTURES. LTD

視力を取り戻して美しく変身した妻に、嫉妬を抱く冴えない夫


 若くて美しいジーナは目が見えない。幼い頃の交通事故で視力がほとんどなくなってしまったのだ。しかし、彼女には保険会社に勤める優しい夫のジェームズがいた。ジェームズは冴えない中年男性の風貌だが、稼ぎもよく、何より献身的に失明のジーナを支えてきた。とても仲がよい夫婦で、問題は子供ができないことぐらいだった。ある日、そんな彼らにいい知らせが届く。眼科医が移植手術により片目の視力が戻る、というのだ。

 手術は無事に終わり、ジーナの視力がだんだんと回復していく。初めて見る夫のジェームズの顔は彼女が想像していたイケメンではなかった。これまではすべてジェームズの言うことを聞いていたジーナだが、視力が回復すると自己主張するようになる。オシャレにも目覚め、社交的になっていく。少しずつ夫婦のバランスが崩れていく……。

 と、最初にあらすじを読んだとき、結局はルックスよりハートだよ、というベタな愛の物語かと思ったのだが、これが全然違って裏切られた。そして、面白かった。男女がすれ違っていく様子がとても繊細に描かれている。赴任先のタイや旅行で訪れるスペインなどの映像がとても美しい。互いに疑念を募らせていく夫婦の駆け引きはサスペンスさながらだ。

 見えるようになると、見なくていいものがたくさん見えて不幸になってしまうこともある。出会い系アプリの加工された美しいプロフィール写真の女性と毎日やりとりを続ける僕たちは、きっと“真実”は見えないままでいたほうがいいんだろう。あえて“出会わない”のが、出会い系の正しい使い方かもしれない。



【藤沢数希】
理論物理学研究者、外資系金融機関を経て、作家。メルマガ「週刊金融日記」は読者数1万人、ツイッターのフォロワーは14万人を超える。最新刊『損する結婚 儲かる離婚』が発売中


『かごの中の瞳』
配給/キノフィルムズ 監督/マーク・フォースター 出演/ブレイク・ライブリー、ジェイソン・クラークほか 全国公開中





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