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「中国版サブプライム」の危機!? 続く米中貿易戦争が落とす影

 経済力や技術力で「日中逆転」が叫ばれ、イノベーション大国として中国を持ち上げる論調が近年増えていたが、米中貿易戦争の火蓋が切られた夏頃から、流れが一気に変わったように見える。いったい何が起きている?

中国経済

株安元安、住宅ローン危機、P2P金融崩壊!


 これまで、中国経済崩壊論がたびたび囁かれてきたが、実際には崩壊には至らず「崩壊論の崩壊」が唱えられてきた。しかし、今回ばかりは決定的にヤバいかもしれない。あらゆる経済指標に、警告灯が点灯し始めているのだ。1月に今年最高値をつけた後、軟調に陥った上海総合指数は10月18日に2486ポイントまで下落。これは3年前、上海取引所の上場銘柄の時価総額の3分の1が一瞬で吹き飛び、半数の銘柄にサーキットブレーカーが発動された「チャイナショック」以来の低水準だ。

下がり続ける株価と人民元

下がり続ける株価と人民元

 証券市場だけではない。実体経済でも大きな懸念材料がある。10月、IMFが推計した中国の今年のGDP成長率は6.6%にとどまった。米中貿易戦争の継続も考慮された結果だが、’92年に社会主義市場経済体制が導入されて以来、最低の成長率となったのだ。ジェトロ・アジア経済研究所の上席主任調査研究員・大西康雄氏は、失速の要因についてこう話す。

「米中貿易戦争の影響が中国政府の予想以上に早く出ている。輸出不振で外貨の流入が減っているのに加え、必要な場所に資金が回っていない。中国の銀行は国有企業を中心とした大手企業にしか融資をせず、公共投資で経済成長を維持しているから。成長が期待されるAI(人工知能)・テック関連にもカネが回っていないのが現状。人民銀行は債券を購入して現金供給を増やしているが、不良債権に吸収され、行き詰まり感がある」

 一方、与信管理や信用調査を行う、リスクモンスターチャイナ総経理の加藤健利氏は、企業の倒産が急増するなか、商業銀行が不良債権に悩まされていると指摘する。

「’17年末時点の商業銀行の不良債権は1兆7057億元(約27兆円)で、24四半期連続で上昇しています。背景には、裁判所に破産を申請する、いわゆる法的倒産の数が増えていることが挙げられる。かつては夜逃げのように突然消える経営者が大半で、法的倒産は少なかった。ところが約2年前から進められている『ゾンビ企業撲滅』の動きもあり、裁判所が破産処理のチームを設立し、法的倒産に対する申請処理を進めている。従来の受理件数が千数百件程度だったのが、’17年は9542件と急増した。今後も続くでしょう」

 一方、特にリスクが顕在化しているのが、製造業だという。

「輸出比率の高いメーカーは米中貿易摩擦の影響も少なくないでしょうが、財務諸表に表れるのは来年以降になる。加えて製造業に逆風となっているのが政府の進める環境規制。規制に対応するための設備投資が必要となったり、最悪の場合は操業停止、工場の移転を命じられることもある。突然、生産ができなくなると資金が回らなくなるため、財務状況が悪化している企業は少なくない」(加藤氏)

 中国の要となる製造業への痛手は、来年はっきり数字に出てくるというわけか。苦境にあるのは投資家や企業だけではない。国民の家計が悪化しつつあることは、政府の統計データからも読み取れる。例えば’12年に可処分所得に占める家計債務(多くは住宅ローン)の割合は71.1%だったが、’17年には107.2%に激増。GDPに占める国民全体の家計債務も同29.7%から48.4%に跳ね上がっている。

《家計負債も急増している》

※出典:上海財経大学高等研究院、国家統計局、中国人民銀行

「原因は住宅ローンの増大です」

 そう話すのは、エコノミストの安達誠司氏だ。

「主要70都市の新築住宅平均価格が40か月連続で上昇するなか、住宅ローンが家計をジリジリと圧迫している。個人の与信が大きい先進国と比べればまだ少ないですが、わずか5年でこの増加率は危険水域といっていいでしょう」

 地方都市の一般的なマンションでさえ、価格は「給料200年分」というのが珍しくないが、住宅ローンを抱える世帯の約3分の1が、すでに破産の危機に直面していると伝える香港メディアもある。

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トランプ再選がなくても米中貿易戦争は続行する

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