どん底まで堕ちた「ビットコイン市場」が再び活況の理由
“夢の通貨”のはずが、日本の大手取引所が破綻し、日本はおろか世界のビットコイン業界にネガティブな印象を与えた事件から約1年。どん底まで堕ちたビットコインが再び脚光を浴びているという
◆全世界で一日の取引量が60億円。新興国の経済不安が高騰の引き金に
ビットコインは無実である――。
今年8月、警視庁はビットコインの大手取引仲介会社で、東京・渋谷区にあった「マウントゴックス」の社長、マルク・カルプレス容疑者(30歳)を業務上横領容疑で再逮捕した。
事件をふり返れば、’14年2月にマウントゴックス社の保有する大量のビットコインがサイバー攻撃で消失する事件を受け、顧客の預かり金を私的に使った疑いで捜査が進められていた。マルク容疑者は弁護人を通じ「いずれも正当な支出」と主張するが、近々に真相が解明されると予想される。
この事件で一時は信用が“地に堕ちた”ビットコインだが、最近はユーザー数が右肩上がりだという。なぜ好転しているのか? 新興ビットコイン販売所「bitFlyer(ビットフライヤー)」代表取締役・加納裕三氏が話す。
「マウントゴックス社の社長が逮捕され、不正が暴かれることで『ビットコインは無実』と人々の理解が進んだのだと思います。事件は単なる個人による横領事件で、ビットコインの本質とはなんら関係ないものです。大きな銀行で横領があっても、ネットワークやシステムには問題がないのと同じです」
事件直後の世界のユーザー数は10万~15万人ほどだった。その後、世界共通の通貨になるのではとの期待から、わずか1年で1000万から2000万ユーザーにまで跳ね上がったという。
「ビットコインのユーザー数は右肩上がりに増え、ギリシャや上海株のバブルの崩壊など、世界的な通貨危機があるたびにユーザー数が跳ね上がるような状況です。取引額は全世界で一日60億円ほどと推測されますが、みなFXのように投資や投機目的で参入しているようです」(加納氏)
ビットコイン事情に詳しい早稲田大学・岩村充教授が、主に新興国などの経済状況が不安定になったときにビットコインが値上がりする理由について続ける。
「既存の通貨に不安が生じたら、そこから逃避するためにビットコインを使いたいのです。’13年にキプロスが国内の預金に課税しようとしたことで話題になりましたが、国内に預金を持っている人は、それを逃れようとした。そこでユーロ建て預金を下ろし、ビットコインを買って、どこかに送金してドルに換えたわけです。キプロス危機では、ロシア人の富豪が運用していたユーロ建て預金を、課税されないためにビットコイン化したといわれています。それで一気にビットコインが値上がりしました。キプロスは金融危機が起こっているので、ユーロのまま他へ移すことは、当局に監視されており不可能。だから銀行を通さない、要するに、監視の目が行き届かないビットコインを“乗り物”として使ったのです。
これ以降、新興国の経済不安が起こると、キプロスの例を連想してか、ビットコインに買いが入り、そうしたユーザーが増えると、価格が急上昇する。新興国にも富豪はいます。送金もできず、現金を抱えて国外へ持ち運ぶことはできない隘路に陥ったときビットコインは有効な手段となるのです。案外、イスラム国の幹部勢力などは資産をビットコイン化しているかもしれないですね」
そして現在の活況の背景には、経済危機をチャンスと見て買い漁る中国人の存在もあったようだ。日本デジタルマネー協会理事・大石哲之氏が詳しく解説する。
「人民元は基本的には、海外の銀行は預かってくれません。日本へ送金しようとしても日本の銀行は人民元を受け取りません。中国では、ドルに換えられる金額も、持ち出せる金額も決まっています。そういった意味で国際的に人民元は使いづらい。しかしビットコインは、今のところ制限はありません。また中国のほとんどの取引所は、ビットコインと人民元の交換は無料で、ビットコインからドルなどに換金する場合の手数料も、0.2~1%ほどになっています。安く買って、高く売るということを繰り返しているのです。
また、中国にはビットコインの『マイニング(“採掘”=取引台帳の更新作業をした有志に支払われる25ビットコインの報酬)』を競う『マイナー』が数多くおり、それに熱を上げる古くからのユーザーも多い。相場好きも多く、投機目的の人も数多くおり、マウントゴックス事件の前からその傾向にありました。
中国のビットコイン大手取引所3社だけで、現在は世界の取引量の約7割がやりとりされている状況です。ビットコインは世界的な経済危機を契機によく値動きしますから。ギリシャ危機のときは、1ビットコインが220ドルから300ドルまで上がり、売り買いが激しくなりました。もちろん中国の投機家も、そのタイミングで取引していたでしょう」
【加納裕三氏】
東京大学大学院工学系研究科修了後、ゴールドマン・サックス証券などを経て’14年1月、日本最大のビットコイン取引所「bitFlyer」を創業、現社長。アジアのビットコイン業界をけん引する
取材・文/高木瑞穂 撮影/遠藤修哉(本誌) 写真/時事通信社
─ なぜ[ビットコイン市場]は再び活況なのか? ─
事件をふり返れば、’14年2月にマウントゴックス社の保有する大量のビットコインがサイバー攻撃で消失する事件を受け、顧客の預かり金を私的に使った疑いで捜査が進められていた。マルク容疑者は弁護人を通じ「いずれも正当な支出」と主張するが、近々に真相が解明されると予想される。
この事件で一時は信用が“地に堕ちた”ビットコインだが、最近はユーザー数が右肩上がりだという。なぜ好転しているのか? 新興ビットコイン販売所「bitFlyer(ビットフライヤー)」代表取締役・加納裕三氏が話す。
「マウントゴックス社の社長が逮捕され、不正が暴かれることで『ビットコインは無実』と人々の理解が進んだのだと思います。事件は単なる個人による横領事件で、ビットコインの本質とはなんら関係ないものです。大きな銀行で横領があっても、ネットワークやシステムには問題がないのと同じです」
事件直後の世界のユーザー数は10万~15万人ほどだった。その後、世界共通の通貨になるのではとの期待から、わずか1年で1000万から2000万ユーザーにまで跳ね上がったという。
「ビットコインのユーザー数は右肩上がりに増え、ギリシャや上海株のバブルの崩壊など、世界的な通貨危機があるたびにユーザー数が跳ね上がるような状況です。取引額は全世界で一日60億円ほどと推測されますが、みなFXのように投資や投機目的で参入しているようです」(加納氏)
ビットコイン事情に詳しい早稲田大学・岩村充教授が、主に新興国などの経済状況が不安定になったときにビットコインが値上がりする理由について続ける。
「既存の通貨に不安が生じたら、そこから逃避するためにビットコインを使いたいのです。’13年にキプロスが国内の預金に課税しようとしたことで話題になりましたが、国内に預金を持っている人は、それを逃れようとした。そこでユーロ建て預金を下ろし、ビットコインを買って、どこかに送金してドルに換えたわけです。キプロス危機では、ロシア人の富豪が運用していたユーロ建て預金を、課税されないためにビットコイン化したといわれています。それで一気にビットコインが値上がりしました。キプロスは金融危機が起こっているので、ユーロのまま他へ移すことは、当局に監視されており不可能。だから銀行を通さない、要するに、監視の目が行き届かないビットコインを“乗り物”として使ったのです。
これ以降、新興国の経済不安が起こると、キプロスの例を連想してか、ビットコインに買いが入り、そうしたユーザーが増えると、価格が急上昇する。新興国にも富豪はいます。送金もできず、現金を抱えて国外へ持ち運ぶことはできない隘路に陥ったときビットコインは有効な手段となるのです。案外、イスラム国の幹部勢力などは資産をビットコイン化しているかもしれないですね」
そして現在の活況の背景には、経済危機をチャンスと見て買い漁る中国人の存在もあったようだ。日本デジタルマネー協会理事・大石哲之氏が詳しく解説する。
「人民元は基本的には、海外の銀行は預かってくれません。日本へ送金しようとしても日本の銀行は人民元を受け取りません。中国では、ドルに換えられる金額も、持ち出せる金額も決まっています。そういった意味で国際的に人民元は使いづらい。しかしビットコインは、今のところ制限はありません。また中国のほとんどの取引所は、ビットコインと人民元の交換は無料で、ビットコインからドルなどに換金する場合の手数料も、0.2~1%ほどになっています。安く買って、高く売るということを繰り返しているのです。
また、中国にはビットコインの『マイニング(“採掘”=取引台帳の更新作業をした有志に支払われる25ビットコインの報酬)』を競う『マイナー』が数多くおり、それに熱を上げる古くからのユーザーも多い。相場好きも多く、投機目的の人も数多くおり、マウントゴックス事件の前からその傾向にありました。
中国のビットコイン大手取引所3社だけで、現在は世界の取引量の約7割がやりとりされている状況です。ビットコインは世界的な経済危機を契機によく値動きしますから。ギリシャ危機のときは、1ビットコインが220ドルから300ドルまで上がり、売り買いが激しくなりました。もちろん中国の投機家も、そのタイミングで取引していたでしょう」
【加納裕三氏】
東京大学大学院工学系研究科修了後、ゴールドマン・サックス証券などを経て’14年1月、日本最大のビットコイン取引所「bitFlyer」を創業、現社長。アジアのビットコイン業界をけん引する
取材・文/高木瑞穂 撮影/遠藤修哉(本誌) 写真/時事通信社
─ なぜ[ビットコイン市場]は再び活況なのか? ─
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