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日本の水が外国資本に売り飛ばされる!?「水道民営化法」成立で料金高騰&サービス低下は必至

水も外交や経済の切り札になっている

 コチャバンバ水紛争は、「新自由主義」と市民の闘いとして語られることも多い。赤字塗(まみ)れで普及が進まなかった水道インフラを拡充するため、ボリビア政府は世界銀行に支援を求めたが、そのとき世銀が出した融資条件が「水道事業の民間企業への売却」と「フルコスト・プライシング(かかる開発コストのすべてを利用者が負担とすること)」だった。途上国のボリビアは条件を受け入れる以外に道はなく、水道公社を米国企業に売却。その後、井戸水やためた雨水に至るすべての水資源が米国企業の独占管理下に置かれ、大混乱を招くこととなった。堤氏が続ける。 「公営事業の民営化が、サービス向上や料金値下げなど国民のメリットに繫がるのは、競争原理が働き、複数の企業が競い合うからです。ところが、水道事業には競争原理が働かない。というのも、電気事業は1つの送電網を何社かの電力会社が共有するが、水道事業の場合、1本の水道管で1つの地域や自治体をカバーするので、完全な1社独占になってしまうのです。複数の企業が参入していれば、乗り換えという選択肢もあるが、独占市場では料金が高かろうが、水にサビが混じろうが、文句は言えない。  加えて、3.11後、電気料金の総括原価方式が問題視されたが、水道もこの方式を採用しており、水道設備の運営・維持費用などの経費以外にも、株主配当や役員報酬、法人税や内部留保まで料金に上乗せできてしまう……。今回、成立した法律は、運営権を企業に売却した自治体には地方債の利子を減免するなど、民営化に誘導するもの。いわば、財政難に苦しむ自治体の頰を札束で引っぱたくような嫌らしいやり方であり、世銀やIMFが財政危機の国を救済することを条件に電気・水道・ガスなど公共インフラの民営化を必ず要求している構図と通底している」 「水道民営化法」成立 近い将来、巨大資本をバックに「ウォーターバロン」(水男爵)と呼ばれる世界の水メジャーが日本にも押し寄せてくることを危惧する声も上がっている。今回の水道法の改正を巡って、参院厚生労働委員会の参考人質疑にも立った水ジャーナリストの橋本淳司氏が話す。 「かつて、石油が戦略物資として使われたように、水もすでに外交や経済の切り札になっている。’40年には世界人口の4割が安全な水にアクセスできなくなることが確実視されており、今後、水が石油と同等かそれ以上の戦略物資になることは明らかです。にもかかわらず、政府はあまりにも安易に水道事業を民間企業に売却できるようにしている。問題なのは、コンセッション方式に手を挙げる企業が、水メジャーをはじめとする外資ばかりになる可能性があることです。  近い将来、日本の仮想敵国が国内の浄水場を運営している可能性さえあり、安全保障上、重大な懸念があると言わざるを得ない。本来なら、水道事業の運営は日本の企業に担わせればいいが、残念ながら国内企業が持っている水ビジネスのノウハウはゼロに等しい。これに対し、世界の水メジャーと呼ばれる仏のヴェオリア社やスエズ社はこの分野で約200年の蓄積があり、資金力も莫大で、これから参入する日本企業は太刀打ちできないでしょう。外国企業に水という生命線を握られるということは、国を占領されるのに等しいと言える」  今年は西日本豪雨や北海道地震など大規模災害が頻発した年でもあった。災害時にライフラインの要である水道がストップしたら、営利追求の民間業者が全力で復旧に当たってくれるのか? 疑念が拭えない。 取材・文/週刊SPA!編集部 ※週刊SPA!12月11日発売号「今週の顔」より
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週刊SPA!12/18号(12/11発売)

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