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山田ゴメスがトマト不足を憂う

―[山田ゴメス]―
ベテランライターが原点回帰のドサまわり。独断と偏見で選んだ、巷をにぎわすニュースを猛追跡! 【記者・ゴメスが追う 第12回】 「トマトに含まれる物質が、血中の中性脂肪の値を下げることがマウスの実験で確認された」  京都大学農学研究科と日本デルモンテによるそんな共同論文が2月10日、米科学誌『プロスワン』で発表され、テレビでも報道された。となれば、いったいどーいうことになるのか? そう! スーパーやコンビニから、トマトジュースが姿を消してしまうのである。 ◆偶然ではなかったトマトジュース完全品切れ状態
トマトジュース

某スーパーにて。あまりにわかりやすく、というか不自然にトマトジュースだけが売り切れている

 私ごとですが、風邪をひいてしまいました……。すると僕の体は酸味の強いもの、たとえばトマトジュースなんかを猛然と欲するのだ。てなわけでスーパーに行ったはいいが、トマトジュースは売り切れ。たまたま運が悪かったのかな? と、その日は単なる偶然としか考えず、すぐ横でガッツリ売れ残っている野菜ジュースを購入し、家に戻る。ところが次の日もトマトジュースのコーナーだけがキレイサッパリ、すっからかん状態だ。  さすがに、コイツはおかしい……。と、調べてみると……ありました! ネット上にこんなニュースが!! 「トマトは“赤くなると医者が青くなる”といわれ(←ゴメス的には意味不明)、カロテンやリコピンなど抗酸化機能のある成分が含まれている。脂質異常症や糖尿病にも効くといわれており、グループが有効成分を探したところ、脂肪燃焼を促進する不飽和脂肪酸の一種(リノール酸誘導体)を見つけた。有効成分の粉末を高脂肪食とともにマウスに1か月間与えると、与えないマウスと比べ血中や肝臓の中性脂肪量が約3割減った。成分の摂取によって肝臓で脂肪燃焼に働くタンパク質が多く作られ、血糖値が低下することを確かめた」  早い話が、メタボ対策にいいってことだ。 ◆爆発的なペースのフードファディズム現象  とくに脂肪燃焼効果がある成分はジュースに多く含まれているらしく(「製造時の加熱で成分が増えるのではないか」という推測が挙げられている)、とある関西のスーパーでは、「以前は1日に数本程度しか売れなかった900g入りトマトジュースが、先週末から3倍のペースで売れ、たちまち品切れに。(購買層としては)まとめ買いをする中年男性が目立っています」とのこと。  典型的な「フードファディズム」と呼ばれる現象(消費者がダイエットや健康に良いとされる食品に殺到すること)で、現状ではまだ、トマトジュースでとどまってはいるものの、この学説の、今後のフィーバーぶり次第では、野菜ジュースもトマトピューレーもホール缶トマトもミネストローネスープの素も、そしてトマト自体も品薄となる事態を引き起こすのは必至である。

「ミネストローネ風パスタの素」も売り切れ!

◆なぜゴメスは、ここまで今回のフードサディズムに敏感な反応を示すのか?  たしかに気持ちはわからなくもない。ちなみに実験用のマウスに与えられたトマトの量は、“人間に置き換えればジュース200mlを1日3回飲むのに相当する”そうで、それくらいなら気軽に毎日常飲もできる。でも僕はあえて言いたい! 「単にマウス試験で確認されただけ!」だぞ。「(人間に対する)ダイエット効果を確認するには、さらなる実験が必要」な段階にすぎないんだぞ、と。  そりゃ、万一デマでも体に悪い食材ではないのだから、リスクもない。でも、はたしてアナタたちはなんの疑問も抱かず、マスコミに踊られっぱなしでプライドはないのか?  白インゲン豆、バナナ、ゆで卵……と、過去あらゆるメタボに関するフードファディズム現象があったにもかかわらず、なぜ僕が今回にかぎってこうムキになっているのか、といえば、僕が「好きな食べ物は?」と訊ねられると、「トマト・白菜・鰹・オージービーフ」と答えてしまうほどのトマト好きだからに他ならない。つまり、人ごとじゃないのである。イタリアンレストランだってトマトの仕入れに大わらわ、になってしまうではないか。  だから、僕はここで、こんな学説を発表しよう。

ゴメスがつくる料理にもトマトは多く使われる。当然、隠し味はトマトジュースだ。だから、僕はここで、こんな学説を発表しよう。

「エビやカニに含まれている銅製の青い血は脂肪を燃焼する効果があり、メタボ対策に最適!」  もちろん大ウソだ。ただ、エビカニ・アレルギーを持つ僕としては、このような学説によって、仮に海老と蟹がスーパーから消えたところで、痛くもかゆくも(蕁麻疹が出ちゃうだけに?)ないのである。  過剰なフードファディズムによるトマト不足を憂う、真にトマトを求める者がする、ささやかなリベンジだと考えていただきたい。 <取材・文・撮影/山田ゴメス> 【山田ゴメス】 1962年大阪府生まれ。マルチライター。エロからファッション、音楽&美術評論まで幅広く精通。西紋啓詞名義でイラストレーターとしても活躍。日刊SPA!ではブログ「50にして未だ不惑に到らず!」(https://nikkan-spa.jp/gomesu)も配信中。現在「解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ系列)(http://www.ntv.co.jp/99answer/)に“クセ者相談員”として出演。『クレヨンしんちゃん たのしいお仕事図鑑』(双葉社)も好評発売中!
―[山田ゴメス]―
大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター兼コラムニスト&イラストレーターであり、「ネットニュースパトローラー(NNP)」の肩書きも併せ持つ。『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。保有資格は「HSP(ハイリー・センシテブ・パーソンズ)カウンセラー」「温泉マイスター」「合コンマスター」など
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