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“両親と同居”していたのに孤独死した氷河期世代の50代男性。特殊清掃員が感じ取った「見て見ぬフリをしていた」可能性

 特殊清掃の仕事では、“孤独死”の現場に遭遇する確率が高い。だが、「いったいなぜこの環境で孤独死が起こるのであろうか?」と頭を抱えるケースがあるという。たとえば、“二世帯住宅”だ。  都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに詳しい話を聞いた。

二世帯でも日常生活で顔を合わせる機会は皆無

高齢者男性の後ろ姿

※写真はイメージです。以下同

 親世帯と子世帯が一緒に暮らす二世帯住宅の場合、孤独死とは無縁のような環境に思える。だが、2〜3ヶ月に一回程度は二世帯住宅での孤独死現場に遭遇するという。 「よくあるケースとしては、玄関で二世帯が分かれていて、建物の中で繋がっていないといった状況ですね。リビングや階段で繋がっていれば、物音がしない静けさや、臭いの異変などで気づきやすいと思うのですが……。世帯間で日常生活においてまったく交流がないことも多いので発見が遅れる場合もあります」  特に、兄弟などの関係性で二世帯住宅の孤独死が増えてきているという。 「上の階にお兄さん、下の階には弟さんの夫婦が住んでいて。6LDKなどの間取りで、1フロアで150平米くらいあるような豪邸です。  兄弟同士は最低限のやりとりはあるものの、わざわざ声をかけたりといったこともなく、顔を合わせれば喋るくらいの関係だったようです。最近顔を見ないから大丈夫かなと思い、家をたずねると、すでに死後3週間くらい経過していて、体液などが滲み出ていたという状況がありました」  孤独死の発見でよくあるのが、2階の体液が下の階に垂れてきて気づくというパターンだ。しかし、今回は豪邸できちんとした作りになっていたことが仇となり、発見が遅れてしまった。

距離感が近すぎて逆に交流を避けるケースも

「二世帯住宅とはいえ、実質、マンションの隣の家みたいな感じになるので、どうしても発見が遅れてしまうようです。  また家が近すぎるというのが、逆に交流をしない原因にもなっているようです。本来は玄関は一つあって、家の中でもお互いの家を行き来できるといった作りにした方がいいかと思われますが、家族といっても“プライバシーを守りたい”など、様々な事情があるのでしょう。  自分の兄弟となると、“まだ死ぬ年齢じゃないから”という思い込みもあります。年齢は関係なく、二世帯住宅での交流は3日音沙汰がなかったら連絡を1本入れてあげるみたいに気を使ってあげることが大事なのかもしれません。倒れていても発見が早ければ、命が助かる可能性もあります」
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“見て見ぬふり”をするケースも
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(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦
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