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防衛省で襲われた自衛官が、銃に実弾さえ入れられない悲哀

自衛官の小銃に実弾が入っていなかったと報道する意味

 この事件で不思議なのは報道内容です。共同通信は「正門にいる自衛官が持つ小銃に実弾は入っておらず、奪われても発射される恐れはないという」と配信しました。  自衛隊の本丸である防衛省の正門警護には実弾の入っていない門番しかいないことをわざわざ世界中に広める感覚が理解できません。春には天皇陛下の譲位とそれにともなう改元の行事が予定されており、我が国はたくさんの外国の賓客を迎える準備に入ります。また、朝鮮半島・中国の情勢も予断を許さない状況です。  そのような中で、安全保障の要となる防衛省の門番のあまりにも悲しい武装状況を世界に向けて発信したわけです。マスコミがテロリストに情報を与えていいのでしょうか? 防衛省で歩哨の自衛官が襲われたと聞いた時、私などは真っ先に「その自衛官は怪我をしなかったか?」と心配しましたが、マスコミが心配したのは自衛官の安否よりも「実弾の入った自動小銃は奪われなかったのか? 奪われたら危険では?」ということでした。
陸上自衛隊twitterより

※陸上自衛隊twitterより

 テロに対して直接対峙するのは警察ですが、その後ろに自衛隊がいるからこそ警察も存分に対処できるはずです。基地警備がこれほど手薄ならば自衛隊の基地機能を破壊するのはたやすいと考える輩も出ます。この事件を自衛隊の警備体制を見直すキッカケにするべきだと思います。  そもそも、自衛隊が自らの基地や駐屯地を守るための武装すらできないというのは恐ろしいことです。紛争以前に基地機能を潰されてしまえば、その時点でもう国は守れません。この教訓をどうか有効に活かしてもらいたいものです。
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防衛省の正門には警備会社のガードマンがいる
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……


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