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防衛省で襲われた自衛官が、銃に実弾さえ入れられない悲哀

防衛省の正門には警備会社のガードマンがいる

 戦後、GHQが占領政策の一環として敷いた「WGIP(War Guilt Information Program)」の下、「日本は侵略国家であった」という洗脳と「軍国主義者」が善良な国民を騙して戦争に駆り立てたという宣伝が行われ、日本人に戦争に対する罪悪感を植え付けました。その間違った歴史観は、その後さまざまな検証がなされ覆されているにもかかわらず、今も我が国の安全保障に暗い影を落としています。  たとえば、自衛隊は「悪」で自衛隊の「武力」は侵略に使われるという偏見です。警察が実弾を込めた拳銃を所持していても、私たちは疑問を持ちません。同様に、国を守る軍人が実弾を込めた銃を持つのは「我が国以外では」当然のことです。  私たちを守る公的機関は等しくそのために必要な力を持つべきだ、という正常な感覚が我が国には決定的に欠けています。いくら自虐史観を植え付けられたとしても、もう戦後70年以上経っているのです。インターネットを通じて誰もが自由に情報を手に入れられる時代、この緊迫した情勢の中でなお、その嘘に騙され続けて改めないならば、もはや救いはありません。  しかし、現実には自衛隊基地を作るにあたり地元自治体に「弾薬や銃を持ち込むな」とか「戦闘機はこの基地に入れるな」という約束をさせられている事例もあります。我が国を守る自衛隊の武力強化を嫌がる人が多いのは不思議です。私たちを守る力がひ弱でよいとでも考えているのでしょうか。防御壁が突破されれば、敵の蹂躙を受けて苦しむのは私たち国民自身です。  今回「自衛隊が自衛隊の基地すら守れないなら、警察が守るしかないのかしら」という事件報道に対して自嘲気味のコメントを書いている人をSNSで見かけましたが、実はもっと情けないことになっています。
防衛省の正門前

黄色い矢印マークは警備会社の警備員、白ヘルメットが防衛省の警備員 撮影/原純一

防衛省の正門前

※上の写真から一部拡大

 防衛省の正門前には自衛官の制服とは違う、少し青みがかった制服を着た人が立っています。警備会社の警備員です。我が自衛隊の本丸・防衛省は民間のガードマンに守られているのです。悲哀を通り越して、こんな屈辱に怒りを覚えます。  今回の事件はその警備員たちをすり抜け、奥に立っている歩哨の自衛官の小銃を狙ったものですが、警備員も歩哨も警戒心がなさすぎです。自衛隊は軍隊ではないと言う人たちがいますが、まさにその状態です。  警備会社に守られ、満足に実弾すら持てず、侵入者への武力行使も禁じられた組織。それが自衛隊です。自衛隊を縛る法律の愚かさがここに凝縮されています。立派な装備品があっても、どれだけ高価で実力のある兵器を買っても、このままでは国どころか自衛隊自身すら守れません。憲法9条はいまだに我が国にありますが、憲法9条では国どころか自衛隊員すら守れないことがよくわかった事件でした。これでは悔し過ぎます。  せめて自らの基地や駐屯地や自衛隊員自身を守れる自衛隊にしなくては話になりません。まずはそこからです。<文/小笠原理恵>
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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