更新日:2019年08月07日 16:09
エンタメ

殺伐とした恋愛市場で疲れた人を癒やす映画『ねことじいちゃん』

―[モテる映画工学]―
~藤沢数希のモテる映画工学『ねことじいちゃん』~
ねことじいちゃん

©2018「ねことじいちゃん」製作委員会

殺伐とした恋愛市場で疲れた人を癒やす「ねことじいちゃん」の物語

 港区女子、パパ活女子大生、そして星の数ほどいる成功者たちが跋扈する東京の恋愛市場。そこに立てば、否応なしに男も女も値踏みされる存在となる。学歴、顔面偏差値、勤務先企業、年収……。  成功者たちが集うパーティに行けば、きらびやかな美女たちがポケモンのごとく連れられて、すぐさまポケモンバトルが始まる。よりイケてる美女を連れている男が勝ち、イケてない女を連れていれば、いくら成功していてもこのバトルでは敗残者になる。荒涼とした東京の恋愛市場は、さながら勝者なき戦場だ。  そんな恋愛市場で疲れ果てた心を癒やしてくれる作品が『ねことじいちゃん』だ。舞台は年老いた漁師と農夫が細々と暮らす離島。そこにはコンビニすらないが、四季折々の自然があり、たくさんの猫がすんでいる。妻に先立たれた大吉さんは愛猫のタマと暮らし、毎朝のタマとの散歩や、妻が残したレシピで料理をするのが楽しみだ。  近所のじいさんが釣ってきた魚や、農家がおすそ分けしてくれた野菜を、自分とタマのために料理するのだ。この離島では時間がゆっくりと流れている。そんな生活を求めて、都会から引っ越してきた美人の美智子さんはカフェを始めていた。そして、僻地に飛ばされてきた研修医の若田先生と出会う。  しかし、親しい友人の死や大吉自身も今までにない体の不調を覚えたり、穏やかな日々にも変化が訪れ始める……。そして、生まれ育ったこの島で“ねことじいちゃん”が共に豊かに生きるために、ある選択をする。殺伐とした世界で疲れ果てている人こそ、「豊かに生きる」とは何かを考えさせられる作品になっている。
物理学研究者、投資銀行クオンツ・トレーダー職等を経て、作家・投資家。香港在住。著書に『外資系金融の終わり』『僕は愛を証明しようと思う』『コスパで考える学歴攻略法』などがある

ねことじいちゃん
配給/クロックワークス 監督/岩合光昭 原作/ねこまき 出演/立川志の輔、柴咲コウ、小林薫、田中裕子ほか 2月22日公開
©2018「ねことじいちゃん」製作委員会
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