残された中高年が孤独死…超高齢化社会「8050問題」のその先
青春を就職氷河期で過ごし、引きこもりなどの問題を抱えた40~50代の子どもと、その親たちを取り巻く問題を、最近では「8050問題」と呼ぶようになった。
引きこもり当事者たちは、働くことなく、自室から出ることもほとんどなく、親の年金などをあてにして過ごす。親たちは子どものことが心配でしょうがなく、死んでも死に切れない。
大阪府内にある一軒家に住む加藤純夫さん(仮名・50代後半)は、数年前に死体遺棄の疑いで逮捕された。殺人を犯したわけではないが、同居していた父親が病死した後も、役所への届け出など適切な対応をせず、およそ二年間、遺体を放置していたのである。
加藤さんの親族が悲痛な面持ちで打ち明ける。
「純夫は40代でリストラにおうて、結婚もせえへんかった。ずっと実家で暮らしとって、両親は純夫のことをえらい心配しとりました。母親が先に逝ってもうて、父親もボケてもうて。様子見に親族が自宅を訪ねれば、純夫が烈火のごとく怒り狂いましてな。どないも出来へんいうて三年ほど疎遠になっとったら、これですわ。お父さん、一人でひっそり逝ってしもうて、ガイコツになっとった」(加藤さんの親族)
役所の通報で、加藤さんの父の死亡が発覚。当初、加藤さんは死体遺棄の疑いで逮捕されるが、心神喪失の可能性もあり不起訴処分となる。そして一人、自宅に帰った。
「お役所さんやケースワーカーさんが純夫を訪ねてくれたらしいんですが、ボーッとしとるだけで会話も出来へん。貯金もゼロやし、生活保護を受けさしてもろうてなんとか生きとったらしいんですが。結局、純夫もそのまま一人で逝ってしもうた。発見された時、体重は二十何キロしかなかったそうで、家の電気も水道も止まっとりました。かというて、我々に何が出来たかっちゅうたら、何も出来へんのです」(同上)
こうした絶望に陥ってしまえば、たとえ行政の支援を受けようとも、社会生活に復帰することは不可能に近い。
政府もようやくこうした問題を解決すべく対策に乗り出しているが、時すでに遅し、という声は現場を取材する記者からも上がっている。
「8050問題は、すでに引きこもり当事者だけしか存在しない60、70問題として露呈しつつあります。親が亡くなった後、親が残した家で生活保護だけを頼りに、時間が経つだけの人生を送る中高年世代。その生活は想像を絶するものです」(週刊誌記者)
引きこもりの中高年が孤独死
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新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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