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少子高齢化の悲観論はウソばかり!? 年金不安を広めたがる人たち

 昨今、はびこるのは人口減少と少子高齢化による年金破綻、労働力不足などネガティブな未来予測。これからまだ数十年にわたって働き続けなければならない現役世代にとっては無関心ではいられない話題である。だが、そんな行きすぎた悲観論に待ったをかけるのが経済学者の高橋洋一氏。 少子高齢化「国立社会保障・人口問題研究所の調べによると、2053年には日本の人口は1億人を下回り、65歳以上人口は現在の約28%から約38%まで増えると言われています。しかし、その人口減少のシナリオがそのまま生活の貧しさに直結するわけではありません。人口増減率と一人当たりのGDP成長率とに相関関係がないことは世界数十か国のデータを、年代を遡って調査した結果からも明らかになっています」  さらに「70歳まで働く」とセットで話題に上ることの多い、年金についても高橋氏は懐疑的だ。 「年金不安の根拠としてよく持ち出されるのが『65歳以上の高齢者1人を15~64歳の現役世代2人で支える』(’20年の場合)といったロジック。しかし、これは明らかなミスリードをはらんでいます。そもそも公的年金は保険の一種であり、年金数理という計算式によって保険料や受給額が算出されています。人口減少は何も突然起こった出来事でもなく、以前から織り込まれたうえで運用されていて、いきなり破綻なんてことは起こりようがありません」  それではなぜこうも悲観論が飛び交うのか。 「年金不安があるほうが都合のいい人たちがいるからですね。まずは財務省。消費増税を目論む財務省は『年金は社会福祉なので、その対応のためにも増税やむなし』という俗論が広まるほうが好都合なんです。企業も同様で、年金の保険料は企業が半分負担しているため、年金保険料アップは絶対に避けたい。それならまだ消費増税のほうがマシだというのは経済界、大企業の思惑です。今の公的年金の所得代替率は4割程度で、これは世界の先進国のなかでも標準的な水準。とても破綻だなんだと騒ぐような状況ではありません」  根拠の乏しいポジショントークに耳を傾けるよりも我々が今、やるべきことはなんなのか。 「人口減少社会が進むと、規制緩和が進み、どんな成果を上げられる存在なのかという希少性が問われます。組織に属するのも、もちろん悪くはないですが、これからの時代、会社員でいる間は『独立しても働けるようになる訓練をしている時間』と位置づけるくらいがちょうどいいはずです」  つまらない情報に踊らされ、不安を募らせる愚を犯すよりも、考えるべきことはたくさんある。 【高橋洋一氏】 嘉悦大学教授。’55年、東京都生まれ。東京大学卒業後、’80年に大蔵省入省。入省後は大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣参事官などを歴任した。『未来年表 人口減少危機論のウソ』ほか著書多数 <取材・文/週刊SPA!編集部>
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