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マクドナルドが大赤字からV字回復できた最大の理由/馬渕磨理子

V字回復、最大の理由は「たっぷりの貯金」

 なぜマクドナルドはここまで急速な回復ができたのでしょうか。  答えは、「体力」を温存できていたから。  同社の財務諸表(略して“BS”=Balance Sheet)を分析すると、意外な事実がわかります。  マクドナルドのBSは、不祥事が起きる前の2013年時点で、現金が600億円あり、自己資本比率が80%を超える状況でした。つまり、ほぼ無借金だったことで、攻めの経営をできたという背景があります。  新しいことを始めるにはお金がかかります。  仮にお金がなければ、まずは目先の利益を求めて、メニュー単価を下げてお客様を呼ぶ戦略をとっていた可能性もあるでしょう。  日払いのバイトをするよりも、まずは初期投資として資格学校に通い、資格手当のついた仕事を選んだほうが中長期的には高い年収を得られると説明すればわかりやすいでしょうか。医学部はお金がかかりますが、卒業後は高い収入が保障されいています。ただし、そのためには学費を払えるだけの貯金が必要となります。  その点で、マクドナルドには現金600億円がありました。これならば、店舗改装に加え、単価の高い新メニューの開発や仕入れを行うことができます。  会社が“ヤバい時”には、貯金(=体力)がある会社ほど再建しやすいのです。

マクドナルドを“クリニックを開業した一家”にたとえると

 さらに、キャッシュフロー計算書(略して“CS”= Statement of cash flows)を分析すると、同社の意外な事実が分かります。  CSについて、改めて復習しておきましょう。  CSとは、簡単にいうと、「会社にどのくらいの現金があるか」ということがわかるデータです。  キャッシュフロー計算書では、資金の流れを 「営業活動」 「投資活動」 「財務活動」  の3つにわけて表します。 「営業活動によるキャッシュフローがプラス」というのは、会社の事業で稼げていることを意味します。  逆にマイナスだと、事業を続けるほど現金が出ていく状況を示しています。  開業医の家庭でたとえれば、「営業活動によるキャッシュフローがプラス」とは、日々の診療費で入る収入のことを意味します。  マクドナルドの場合、営業活動によるキャッシュフローは下記のように推移しています。 【マクドナルドの営業活動によるキャッシュフロー】 2015年…約-145億円 ↓ 2017年…約319億円  このように、プラスに転換しており、会社の事業で現金を稼げている状態に戻っていることがわかります。  続いて、「投資活動によるキャッシュフロー」を見てみましょう。  これは、会社の将来のためにどれだけ投資できているかを示したものです。  成長している会社の「投資活動によるキャッシュフロー」は通常、マイナスになります。  先ほどの開業医家庭の例を続ければ、息子に将来医学部に入ってクリニックを継いでもらうために、息子を日能研に通わせる“塾代”といえばわかりやすいでしょうか。  マクドナルドは2015年、2017年ともに、「投資活動によるキャッシュフロー」はマイナス。  将来のために、現金を使って投資をしている状態は変わりないということがわかります。しっかり未来のために投資をしているんですね。
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マクドナルドの財務活動によるキャッシュフローは?
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