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将棋の藤井聡太七段、JTプロ公式戦180手の熱戦に見えた「将棋を楽しむ力」

 タイトルホルダー、賞金ランキング上位者などトップ棋士12名だけが出場できる「将棋日本シリーズJTプロ公式戦(以下、JTプロ公式戦)」。8月11日(日)、福岡国際センターで開催された本大会で、最年少出場(17歳)、初の和服姿での対局など話題を集めた藤井聡太七段は、三浦弘行九段との対局に挑んだ。

藤井聡太七段

 対局前の記者会見で、歴戦の強豪である三浦九段の印象を聞かれた藤井七段は「大変なトップ棋士で、終盤が強いという印象です。そのあたりは、自分もしっかり指したいと思います」と意気込みを語っていた。  同時開催される「テーブルマークこども大会」には「小学校低学年の頃から出場していた」と語っていた藤井七段。小学3年生の時に優勝した際、「決勝戦は観客がいる中での公開対局でしたが、そのような大きな舞台で結果を残せたことが、プロ棋士を目指す一つのきっかけになりました」と語るとおり、本棋戦は観客がいる中行われる公開対局。プロ棋士としては初めて九州での公式戦に挑む藤井七段を間近で見ようと、当日は大勢の将棋ファンが会場へと足を運んだ。  結果的にはすでに各所で報じられているとおり、三浦弘行九段に敗れてしまったが、持ち時間の短い本棋戦(持ち時間それぞれ10分、1分あたり5回の考慮時間)では、180手という異例の長手数の対局となった。  対局の概要としては、後手・三浦九段が得意とする「横歩取り」の戦型に先手・藤井七段が真っ向から挑むも、試合巧者の三浦九段が序盤にリードを奪い、逃げ切ったという形。しかし、ベテランA級棋士を相手に序盤で差をつけられながら、持ち時間が少ない将棋で2時間近くもの長手数の熱戦となったところに、藤井将棋の凄まじさがうかがえる。いくつかの図面を見ながら、本局を振り返っていきたい。

第1図 53手目▲3七桂まで 先手▲藤井聡太七段 後手△三浦弘行九段

 藤井七段が指したこの桂跳ねを見て、三浦九段が動く。以下△4四銀▲3四歩△2四歩と進むが、これで3七の桂馬が助からない。持ち駒に歩がもう1枚あるので、次に△5四角から△3六歩と打つ狙いだ。先手は▲4六歩と突けば桂損は回避できるが、それだと8六飛が取られてしまう危険があるのだ。

第2図 94手目△6四銀まで 先手▲藤井聡太七段 後手△三浦弘行九段

 第1図以降、桂損をしながらも盤面左側に活路を見出した藤井七段は左辺の桂香を拾いながら馬を作り後手玉に迫る怒涛の反撃。△6四銀と馬を追い払う手に対して、▲6一銀と鋭い一撃を放ち観戦者が沸き立つ。△同玉に▲6三馬と歩を取りながら寄る手が、6四の銀取りと、金か銀を持ち駒にしたときの詰めろを見せている。

公式戦初の和服姿で対局に臨む藤井七段

公開対局で行われた本局。会場には大勢の将棋ファンが観戦に訪れた

 その後も、観ている人間が「逆転か?」とハラハラするねじり合いが延々繰り返され、屈指の名局と評される熱戦を作り上げた。前日の記者会見で、「テーブルマークこども大会」が同時開催されることもあり、これからプロを目指すこどもへのメッセージを求められた藤井七段。 「まず将棋を楽しむことが大切。そして、将棋は必ず勝敗が決まるゲームなので、勝った時の嬉しさ、負けた時の悔しさを忘れずに、頑張ってほしいです」と語っていたとおり、不利でも長手数の熱戦になったのは、難解な局面を楽しむ気概にあったのでは――そんな印象を受ける一局であった。〈取材・文/日刊SPA!取材班 撮影/山川修一〉
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