仕事

元エース社員が、うつ病で「着信音が怖い」。障害者枠で転職するまで

 2019年8月、ネプチューン・名倉潤が手術の“侵襲”によるストレスが原因のうつ病を公表したことは記憶に新しい。このように、それまで何の前ぶれもなく元気だった人が、意外な理由やきっかけで“急に”うつ状態になってしまう例は多いという。そんな「突然うつ」とも言うべき現象はなぜ起きるのか? 実態に迫ってみた。
男性

※写真はイメージです

唯一の拠りどころ、信頼していた友人に無視されて心が崩壊

●上原雄平さん(仮名・45歳・商社マン) 営業のエースだったはずがある日突然、仕事ができなくなった。「心と体が真っぷたつになった感じだった」と上原さんは振り返る ===  当時、上原さんは新卒で商社に営業職として就職。畜産農家から肉を購入し、スーパーに卸す仕事を担当していた。業績がよく、仕事は順調そのものだった。  しかし、ある日取引先との間でトラブルが勃発。突然、農家側が上原さんに連絡せず肉の内容を変更したのだ。当然スーパー側は激怒。農家側からは謝罪もなく、何の対応もしてくれない。さらに取引先から30分に一回、怒りの電話がかかってくる事態に発展した。 「正直、このようなトラブルはたまに起こるので、ある程度対処法は考えていました。エースという自信もありましたし。それに、いざとなったら大学時代からの腹を割って話し合える友人に相談しようと思っていました。でも現実は違いました」

信頼していた友人に裏切られて失望。幻聴が聞こえる日々

 上原さんは何とかトラブルを解決しようと今まで以上に誠意を持って働いた。そして、このつらい状況を信頼している昔からの友人に相談したところ、まったく聞き入れてもらえなかったのだ。 「『仕事のミスはお前の責任だ、俺に相談されても困る』とのことで……。今までお互いなんでも話し合える仲だったのになぜ!? という気持ちでいっぱいでした。そのうち電話にも出てくれなくなって……。支えとなっていたものが一気に崩れ落ちたような虚しさを感じました。後で別の友人から伝え聞いたのですが、彼も相当仕事のストレスを抱えていて悩んでいたようです。それならばなおさら、お互い励まし合いたかったです」
電話

※写真はイメージです

 どんなに忙しくても、友人との関係が心の支えだった上原さん。仕事でも友人関係でも追い込まれ、心を休める場所を失った。相変わらず、取引先からはクレームの電話がかかってくる。次第に携帯の着信音が鳴るだけで動悸がし、しまいには着信音の幻聴まで聞こえるようになってしまった。また、電車でトラブル相手と容姿が似た人を見かけると車両を移動した。 「家から出られなくなり、不眠や食欲不振が続き、何かしなくてはという焦燥感にも駆られました。ようやく病院へ足を運ぶと、うつ病の診断が下り、抗不安薬や安定剤を処方されました」
次のページ right-delta
障がい者手帳を取得し転職するも…
1
2
おすすめ記事