仕事

元エース社員が、うつ病で「着信音が怖い」。障害者枠で転職するまで

障がい者手帳を取得し事務職に転職するも社内ニートの状態に

 上原さんはうつ病を申告すれば、偏見から職場で不利な扱いを受けるのではと思い、上司に言い出せなかったという。その時期、ちょうど社内公募制度で本社の人事を募集していたので応募。ストレスの多い営業をやめ、本社で事務の仕事をすることに。 「それまで営業でいい業績を収めてきたのですが、事務を始めた途端、一気に仕事ができなくなりました。その後、さらに病院で検査を受けADHD(注意欠陥・多動性障害)の診断が下りました。それを会社にカミングアウトしたらクビになってしまったんです」  さらに妻からはうつ病のつらさを理解してもらえず「めんどくさい」とさえ言われ、のち離婚した。  上原さんは現在、精神障害者保健福祉手帳を取得し、障害者雇用枠で倉庫の事務職として勤務中だ。
障がい者手帳

処方されている薬と障がい者手帳。うつ病は落ち着いているが、いつまた発症するかわからない…

「障害者雇用なのですが、古い体質の会社なので配慮はまったくありません。悪気はないのでしょうが、周りの人が私の仕事を奪っていくんです。私がするより周りがやったほうが速いからだとは思いますが……。そのせいで今、社内ニート状態で毎日が地獄です」  上原さんはいまだに携帯の着信音に恐怖心を抱いており、スマホは常にマナーモード。誰かの着信音が鳴り響くと、トラウマがフラッシュバックしてしまうという。

人材育成コンサルティング企業代表の前川孝雄氏の見解

 上原さんの心が折れたきっかけは友人に裏切られたことですが、職場にも問題があるのでは。あえて就業中に仕事以外の雑談をする機会やコミュニティを設け、弱音を吐きやすくし、困ったときはお互いさまという風土をつくれていたら、結束力も強まり、職場の人に支えてもらえた可能性もあったのではと思います。 <文/週刊SPA!編集部>
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