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ハルキストが消えた!? “村上春樹の聖地”でノーベル文学賞発表日に起きていたこと

 東京・渋谷区にある鳩森八幡神社は、応神天皇と神功皇后をご祭神として祀っている。しかし、秋のある1日だけは、別の者を神と崇める人々が集まってくる。
鳩森八幡神社

画像:鳩森八幡神社HP

 別の神とは作家・村上春樹だ。氏がデビュー前に経営していたジャズバーがこの神社の門前にあり、その著作でも「始まりの場所」と本人が語っていることで、村上春樹を信奉する人々(通称「ハルキスト」)にとっての聖地となっている。秋のある1日とは、毎年のように村上春樹が受賞候補とされるノーベル文学賞の発表の日である。  そんなハルキストたちのお祭りを直撃しに、取材班は鳩森八幡神社へと出かけた。

えっ?ハルキストが誰もいない

 10月10日19:00、小雨のそぼ降るJR千駄ヶ谷駅に降りる。ここから徒歩数分で「聖地」だ。発表は日本時間の20:00なのであと1時間ほど。ひとまず鳩森八幡神社方向へ向かって歩く。
かつて村上春樹が経営していた店へと続く階段

かつて村上春樹が経営していた店へと続く階段

 その道の途中にある雑居ビルが、かつて村上春樹が経営していた店のあった場所で、ビルを見上げるようにドトールコーヒーがある。窓際には、コーヒーを傾けながら本を広げている人の姿が目につき、奥の席にも読書をしている人が見える。世紀の瞬間を前に、ハルキ文学で気持ちを高めているのだろうか。  そして19:30、ハルキストの聖地である鳩森八幡神社に入った。
一応、本を持って待機する筆者

一応、本を持って待機する筆者

 しかし、そこにはハルキストどころか、人っ子一人いない。一体どうしたということだろう。前回2017年は(2018年はノーベル賞委員のスキャンダルにより、賞の選考自体が行われなかった)、中継用のモニターが設置され、ハルキストとマスコミ合わせて200人以上の人が詰め掛けていたというのに。  数年前にこの神社近くで働いていたという人からは、「毎年すごい人ですよ。落選後のため息だけじゃなく、『オーオー』と大号泣していたファンも見たことがある」と言われていたのに。
ハルキスト不在で困惑するテレビクルーたち

ハルキスト不在で困惑するテレビクルーたち

 19:45、いまだに誰もこない。そんな中「すみません、◯◯(テレビ局名)ですけど、今日の村上春樹さんの件について、ちょっとお話をお伺いできませんでしょうか」と声をかけられた。  どうやらハルキストと間違えられたようだ。よく見ると、鳥居の外にテレビクルーが3組ほどいた。彼らもまた、忽然と姿を消したハルキストたちに戸惑っているようで、所在なさげにただそこに立っている。
雨を避けながらハルキストを待つ筆者

雨を避けながらハルキストを待つ筆者

 19:50。手水舎で雨を避けながらハルキストたちを待っていると、遠巻きにこちらの写真を撮る男性がひとり。同業者の動き方とは違っている。スマホを見ているが、ドラクエウォークなどをしているわけもなさそうなので、声をかけてみることにした。

ハルキスト、一人現る!

取材班:「村上春樹さんのファンの方ですか?」 ハルキストっぽい人:「あ、まぁそうです」  いた!第一ハルキスト発見!都内在住の20代後半の男性で、話を聞くと、高校時代に村上春樹の作品に出会い、それからもう10年以上にわたり読み続けているという。一昨年までの熱狂を見て、そこに混ざろうと、初めてやってきたのだそうだ。そして、私たちと同じようにハルキスト不足に直面して戸惑って居たのだった。  さらに、かつてのように、発表の瞬間が中継されると思われていたため、それがないことがわかった今、どうやって当落の結果を知ったら良いのかと途方にくれていた。  これはあまりにも可哀想なハルキストだ。当落の喜びや悲しみを同士と分かち合うこともできないばかりか、賞の行方をリアルタイムで知ることさえできない。  そして、真っ暗な神社の片隅で村上春樹を好きでもなんでもない初対面の男らに話しかけられているのだ。小さな折り畳み傘をさした男性の足元は寒そうに濡れている。
たったひとりのハルキスト

たったひとりのハルキスト(右)と発表を見守る

 19:55、発表の時刻が迫っている。可哀想なひとりぼっちのハルキストを慰めるためには、リアルタイムで結果を知らせ、なおかつ村上春樹が受賞してくれるのが一番だ。ネット中継をしているサイトを探すと、Youtubeがライブ配信していることがわかりすぐにアクセス。  日本語の通訳も字幕もない外国語放送。 取材班:「言葉、わかります?」 ハルキスト:「いえ、わかりません」
字幕すらない発表動画

字幕すらない発表動画

 しかし時間はもう19:58、他を探している暇はない。何を言っているのかわからない外国語の中から「ハルキ・ムラカミ」という、私たちにも輪郭の見える言葉が聞こえてこないか、耳をそばだてていた。
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気が付けば、発表は終わっていた…
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