腕時計投資家の斉藤由貴生です。投資家を名乗るからには「目利き力」が重要だと思っているのですが、私は腕時計以外にも、「目利き力があったな」と自負する場面がこれまで何回かありました。
ということで今回は、目利きはどのようにして行うのかということについて、私の実体験をもとにお話したいと思います。
斉藤由貴生
まず、目利きの基本ですが、対象とするモノについて、きちんとした情報があるということが大前提だといえます。国の防衛力でもそうですが、情報がもっとも重要だといえるでしょう。その情報をきちんと収集できるか否かが重要なのですが、集めた情報からどれが重要なのかをピックアップするというところが、目利き力が試されるところだと思います。
100円で買ったパソコンが3万7000円になった話
私は中学生の頃、よくPCデポに行っていたのですが、当時のPCデポでは中古パソコンが積極的に売られており、そのなかにはジャンクコーナーもありました。
今のPCデポといえば、アップル製品を中心としたおしゃれな店舗が多いように感じますが、20年近く前のPCデポは、まさに「あなたの近所の秋葉原」。そのフレーズといえば、サトームセンのCMが思い浮かびますが、PCデポこそまさにそういった雰囲気だったといえます。
私は当時、自作パソコンを何台か作っていたのですが、秋葉原よりPCデポのほうが魅力的なパーツを見つけられるということも少なくなく、友人用に2万円ほどの中古パーツで組み上げたこともあります。
その当時、私はヤフオクにもハマっていたのですが、パソコンなどの中古相場に興味があったため、ある程度の相場観がありました。ですから、PCデポで売られている中古パソコンを見て、「安い」か「高い」かは瞬時に判断することができ、「安い!」というものを発見したらテンションが上がったことがありました。
そんな私は、ある日、ジャンクコーナーで100円で売られている中古マッキントッシュを発見。スティーブジョブズ復帰直後の一体型パフォーマーだったのですが、2000年当時でも、ジャンクとはいえ100円は破格の安さだと思いました。
100円で買ったPowerMacintosh
そのため、「ヤフオクで売れば3000円ぐらいになるのでは?」と思って、中学2年生の私はそれを購入することを決意。店員さんに、「買います!」というと、「馬鹿なガキが100円だからってゴミ買ったよ」と言わんばかりのニヤッとした表情で対応してくれた記憶があります。
中学生の私は、自動車の免許もないため、買ったパソコンを家まで運ぶ事ができず、親に頼んでクルマで迎えに来てと依頼。文句を言われながらも、そのパソコンを家まで持って帰り、さっそくパソコンをチェック。電源が入れば使っても良いかと思ったのですが、やはり電源は入りませんでした。
そのため、すぐに写真を撮ってヤフオクに出品。3000円ぐらいになればいいやと思い、1円でスタートしたところ、数日後に落札された際、3万7000円以上という価格になっていたのです。
これは、私も予想外。高くても8000円ぐらいだと予測していたのが3万7000円だから驚きました。
そこで調べたところ、そのマックはどうやらパフォーマーでもレアな機種らしく価値があったようなのです。これは、ラッキーな事例ですが、「100円は安い」という目利きがあったうえでの予想外な価値あるものだったといえるでしょう。
私が中学生だった2000年頃、当時の若者の間ではMDが流行っていました。MDの広告で、有名人が「私はMDを信じている」というフレーズがあったことを覚えています。しかし、私はまったくMDを信じていませんでした。
MDが好きでなかった理由は、光学ディスクというデジタルっぽさがありながら、その操作はアナログだった点。オリジナルMDディスクの作成は、パソコンで管理することがほぼできず、カセットと使用感はほぼ変わらないと感じました。
ですから、コンパクトさが良ければカセット、デジタル管理ならCDでいいと感じ、MDに対する価値をまったく感じなかったのです。
しかし、当時の中学生たちはMDを信じていたため、MDを持っていない私に対して「遅れている」などと茶化してきます。それでも、私はMDを持つのが嫌で、家でパソコンで音楽を聴いていました。
そして、2000年ぐらいになると、小型MP3プレーヤーが登場。私はそれも魅力的でないと思っていました。なぜなら、当時のMP3プレーヤーは、曲数が20曲以下といったモノが大半だったからです。なぜだか、コンパクトを売りにした製品ばかりで、大容量を謳う製品はほぼありません。MP3は圧縮された音源だから、大量に持ち運びができるのがメリットだと感じていた私は、もしも予算があったならば、自分でハードディスクのポータブルプレイヤーを作りたいと思っていたほどでした。
そんななか、2001年秋に、アップルが5GBという大容量ハードディスクを搭載したiPodを発表。そのニュースを聞いた瞬間、私は「買う!」と思ったのです。
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、
「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『
腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『
もう新品は買うな!』がある
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