更新日:2023年05月13日 09:59
お金

中古品が出回っても新品が売れるのはなぜ?

 クルマも腕時計も好きな斉藤由貴生です。私は、現代のおかしな消費を変えるために実践を重ねながら、いろいろ研究してきました。私は30代のいわゆるバブルを全く知らない世代です。所有欲の薄い世代とは言われますが、私の場合は、むしろ価値あるものは我慢せず所有したいと考えています。そんな私の価値観を、不定期ですが披露したいと思います。

斉藤由貴生

第34回 中古品の流通はメーカーにとってもメリットがある

 中古品が出回ってしまうと、メーカーにとっては「新品が売れなくなるから、よくないのでは?」とお考えになるかと思います。ですが、全体を見てみると、そんなことはなく、むしろおいしい話に繋がりやすいのです。

中古車が売れるから新車も売れる。その理由は?

 これまで、我々消費者はモノを買うときに「売る」という観点を重視してきませんでした。ニーズがなければ企業も対応しないため、メーカー側も自分たちが売ったモノを消費者が再度売るということを想定していません。従来の常識であれば、高ければ高いモノほど企業も売りにくく、買う消費者も限られてきました。  例えば、消費者が100万円のモノを買ってくれた場合、企業の売り上げは100万円ですが、消費者の負担額も100万円。消費者は100万円というお金がまるごと消えてしまう覚悟が必要だったのです。しかし、100万円で買ったモノが80万円相当で売れることがわかっていれば、実質の負担額は20万円。つまり、企業の売り上げは100万円のまま変わらないのに、消費者の負担額は80万円も減らせるのです。  そうなると、消費者にとっては、より価値のあるモノを買い求めやすくなりますね。今までの常識でしたら、「高くて買えないなあ」と思ったものでも、売ることを前提とすれば買いやすくなるのはおわかりでしょう。  消費者が高いモノを買いやすくなるということは、企業にとってもチャンスとなるのは明らかです。メーカーにとっては大きな利益に繋がるのです。そのため、メーカーには、いっそう価値のある製品を作る課題が出てきます。

モノを売るとき買う側のハードルを下げるいい仕組み

 今度は企業側の視点に立ってみて、100万円のモノを売ることを想像してみましょう。 「100万円で売るにはサービスを良くしなければならない」とか「かなり良いモノを作らなくてはいけない」とか「買ってもらうためには丁寧な説明をしなくてはならない」だと思いそうですね。大学の文化祭で300円のかき氷を売るのとは違い、100万円のモノを売るとなったらハードルが上がります。実際、ほとんどの人にとって100万円のモノをポーンと買うという行為は一般的ではないでしょう。  しかし、実質の負担額が100万円レベルではないということがわかっていれば、だいぶ買うハードルは下がるはず。  クルマがいい例です。すでに「残価設定型ローン」という金融商品が大手自動車メーカー/ディーラーから出ているように、売る時の額を設定すればユーザーは高いモノをより買いやすくなるのです。例えば400万円のベンツでも200万円が残価として設定できれば、200万円に対しての支払額で購入できるのです。

メルセデス・ベンツの残価設定型ローン「ウェルカムプラン」

 これまで高級品と諦めていたモノがもっと気軽に手に入るのです。そして、新品が中古品となってもそれが連続していけば、消費者は買いやすく、企業は儲かるという好循環になるのです。
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

もう新品は買うな!もう新品は買うな!

もう大量消費、大量生産で無駄遣いをするのはやめよう

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