エンタメ

吉本興業で、原発ネタは俄然タブーです

おしどり

東電本店前で、会見場へ突撃する直前のおしどり。自前で作成した膨大な会見記録が詰まった取材ノートを手に(C)八尋研吾

  東日本震災直後の福島原発事故から3か月、東電本店ビル内で毎日行われている政府・東電の統合会見は「会見劇場」とも呼ばれている。ネット配信でライブ中継されるその模様を毎日チェックするマニアもたくさんいるほどで、カメラに顔が映る側である東京電力社員、保安院、安全委員会など“主要メンバー”は、会見ウオッチャーたちからニックネームで呼ばれ、ファンまでついているという。

    一方、カメラに顔が映らない記者席の側もなかなか個性的だ。大手新聞社やテレビ局の記者らに交じって、ヒステリックに声を荒げるフリーランスの男性記者、不慣れな日本語で直球の質問をぶつける韓国テレビ局記者、とにかく声が渋過ぎる海外メディアの記者、淡々と責め続けるドSな女性記者……などなど、香ばしい面々が時に怒号も飛び交う会見場を盛り上げているのだが、そんななか、群を抜いて異彩を放っているのが“吉本芸人”を名乗る2人の記者なのだ。

「グリーンピースの海洋調査では沖合52kmでも暫定規制値をはるかに超えて汚染された海藻が見つかっていましたが、この調査を見ると沖合のデータはないのですか?」

「福島県と宮城県の県境まで淡水魚が汚染されていますが、宮城県の淡水魚の汚染状況はどうなのでしょうか?」

   そんなプロの記者顔負けの鋭い質問を次々とぶつけネット上でも話題になっているこの2人、本当に単なる“吉本芸人”なのか……? 会見場の片隅で日刊SPA!が2人を直撃した。

――吉本興業に新聞部とかあるのですか? ていうか、本当に芸人さんなのですか? 

マコ  本当に芸人です。吉本興業のおしどりと申します。会見に行ったりするのはプライベートでやっています。

――プライベートということは、お笑いの仕事とはまったく関係なく?

マコ  関係ないというか、私たちにとって同じなんです。私がアコーディオンで相方が針金、という芸風なんですけど、ちょっと想像しにくくてごめんなさい(笑)。チビッコのお客さまも多いんですね。で、事故直後からトロロ昆布を買って配っていました。

――トロロ昆布?

マコ   放射性物質のヨウ素対策です。

ケン  マコちゃんは医学部を中退してるんです!大好き!

マコ  おしどりを好きって言ってくださるお客さま、チビッコはみんな守ろう! というのが出発点なので、事故を詳しく知って考える、というのはおしどりの仕事ととして同じことなのです。

 アコーディオン演奏と針金アートを掛け合わせた“夫婦音曲漫才コンビ”のスタイルを取るマコさんとケンさんは、リアルにご夫婦だ。

 震災直後から、東京電力の会見だけでなく、枝野官房長官、保安院、安全委員会、そして、現在は一本化された政府・東電統合対策室の共同会見と、すべての原発事故関連会見を、ニコニコ動画やユーストリームなどを駆使して、まさに“張り付き”でウォッチしてきたのだという。

――かなりの会見に出ているようですが、すごい執念ですね。

マコ   最初は、新聞やテレビが言うてることと、ツイッターに出てくる情報にかなりズレがあると感じてたんで、実際に自分の目でネットの会見番組を全部チェックするようになったんです。今はすべての会見でどの記者が何を質問して、東電側がどう答えたか……質疑応答にかかった時間も含めて全部ノートに記録してます。不謹慎かもしれませんが、ウォッチし始めた当初は、東電の『一軍会見』(事故当初からのメンバーでの会見)で常連の『エース』(取材管理部課長)のファンクラブにも入るくらいハマってたんです。

――なるほど、ただ、最近も俳優の山本太郎さんが所属事務所を辞めるなど、原発関係の話に斬り込むのは芸能界のタブーっていう噂もありますが?

マコ   俄然タブーですよ。吉本と東電は数年前まで一緒に動画配信の会社もやっていましたし、吉本ではNUMO(原子力発電環境整備機構)のイベントの営業もたくさん受けていましたから、これ以上深く原発関係のことに触れるとアウトかな、と思っています。

ケン  僕はマコちゃん大好きなので、吉本を辞めることになっても、芸人を辞めることになっても、ついていく、と話し合いました!

――実際いかがですか?

マコ  いろいろありますが(笑)。吉本は太っ腹だと思います! と強調しておいてください!

ケン マコちゃんは強くてカッコいい、大好き! と強調しておいてください!

 実は、マコさんは「国立大学の医学部中退」というインテリ! 会見での質問内容も日々グレードアップしており、芸人としても注目だが、ジャーナリストとしても要注目な敏腕記者なのだ。

おしどり◎2003年に結成した夫婦音曲漫才コンビ。ツッコミ役でアコーディオン演奏を担当するマコ♀さん(ブログはhttp://oshidori-mako.laff.jp/)と、ボケで針金細工を披露するケン♂さん(ブログはhttp://oshidori-ken.laff.jp/blog/)。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。現在、『NPJ』『マガジン9』『週刊金曜日』など、WEBメディアから骨太週刊誌まで幅広く連載話が転がり込んできているという(ブログなどでも記事をチェックできるそう)




おすすめ記事