デジタル

楽天・三木谷会長が苦悩する「楽天モバイル」と「送料無料」問題

楽天に吹き付ける「逆風」

 楽天はもう一つ大きな難題を抱えている。18日から一律導入される予定だった楽天ECの「送料無料」を巡る公正取引委員会との激しいバトルだ。楽天市場で税込3980円以上を注文した顧客を対象にした新サービスだったが、公取委が「優越的地位の濫用」に当たる可能性があると楽天に対して緊急停止命令の申し立てに踏み切っていた。  これに対し楽天は6日、「送料無料化」の一律導入延期を発表。対象を「一部店舗」に変更することを余儀なくされるなど、出鼻をくじかれた格好だ。ジャーナリストの町田徹氏が話す。 「在庫、発送、配送でイノベーションを行い、一定の基準に基づき手数料を徴収するアマゾンのビジネスモデルと違い、楽天の『送料無料化』は優越的地位の濫用に当たる可能性が高い。というのは、楽天市場にはこれといったイノベーションがなく、在庫や発送は出店者任せのうえ、送料無料化についてもコストを出店者に押し付けようとしているからです。  ただ、楽天は財務状況が悪化しており引くに引けなかった。’19年12月期の連結決算は、最終損益が前期の1422億円の黒字から318億円の赤字転落と、8年ぶりの最終赤字を記録している。米ライドシェア大手・リフト社への投資の失敗や携帯電話事業への先行投資が主な要因でテコ入れが急務だった。つまり、『送料無料化』でコストを出店者に求めざるを得なかったというわけです」  楽天に吹き付ける「逆風」は、これだけで収まりそうにない……。町田氏が続ける。 「政府は今国会に、GAFAやBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)などを規制するための『デジタル・プラットフォーマー取引透明化法案』を提出する予定です。巨大IT企業が強大な立場を利用して、中小出店者や利用者に不利な取引を強いるのを防ぐ意図があったが、残念ながらGAFAに抱き込まれた日本の経済界から『イノベーションの芽を摘む過剰規制だ』などと批判の声が巻き起こったため、法案は骨抜きにされています。  つまり、新法が成立しても、GAFAやBATは野放しに終わる確率が高く、公取委の餌食となるのは楽天のような世界に羽ばたく力のない和製プラットフォーマーぐらい……。本来ならGAFAやBATを規制すべきところ、皮肉なことに、後発の日本企業への弱い者いじめに終始し、米中の巨大IT企業を太らせる結果に終わりかねないのです」  公取委との衝突のなかで、三木谷会長は「反省はするけど改めない」とうそぶくなど強気の姿勢を崩さなかったが、今は苦境を乗り切るために知恵を出すときなのではないか。

楽天には基地局整備に全力で挑んでほしい!

 2年前に菅官房長官が値下げ圧力とも取れる発言をしたのは、携帯料金の高止まりしている要因が、日本でスマホユーザーの5割を占めるアップルと大手キャリア3社の契約にあると見ていたからだ。結果的に改正電気通信事業法が施行され、アップルもiPhoneを値下げする方向に舵を切ったが……。ここは、楽天の踏ん張りに期待したい。 <取材・文/週刊SPA!編集部 写真/朝日新聞社> ※週刊SPA!3月10日発売号より
1
2
週刊SPA!3/17号(3/10発売)

表紙の人/ 藤田ニコル

電子雑誌版も発売中!
詳細・購入はこちらから
※バックナンバーもいつでも買って、すぐ読める!
テキスト アフェリエイト
新Cxenseレコメンドウィジェット
おすすめ記事
おすすめ記事
Cxense媒体横断誘導枠
余白
Pianoアノニマスアンケート