更新日:2023年05月24日 15:35
仕事

マスクを買い占めたバイト仲間…コンビニ店員の僕が見た裏側

トイレットペーパーとティッシュペーパーも品薄に

 また別のある日のこと。トイレットペーパーとティッシュペーパーが急に飛ぶように売れていき、これらが大量に並んでいた棚が一瞬にして空になった。ふだんそれほど売れるような商品ではなかったので妙な感じがした。  この原因はあとになってわかった。SNSで「新型コロナウイルスにかかわりトイレットペーパーとティッシュペーパーが品薄になる」というデマが拡散し、それを信じた人々が慌てて買いに走ったのである。  しかし、不思議なのはここからだった。業界団体はすぐに「十分な供給量・在庫を確保している」とこのデマを否定。店にはいつもどおりの量が入荷されていた。それにも関わらず、その後もしばらくは品切れの状態が続いた。  いったいどうしてこんなことになってしまうのか。その仕組みはこういうことらしかった。トイレットペーパーとティッシュペーパーを一度に入荷できる量には限りがあるため、空になった棚のすべてを埋めることはできない。そのガラガラの棚を見た客は「品薄になるというのはやはり本当なのかもしれない」と不安に駆られて買い占める。そしてまた棚は空になり……。そんな悪循環に陥っていたようなのだ。  他人がどうなろうとも自分だけは助かりたい。自分だけは、自分だけは、自分だけは……。現在の世界の共通の敵は新型コロナウイルスなどではなく、人間のそんなエゴなのではないか。空になったマスクやトイレットペーパーの棚を眺めながら、僕はそんなことを思ってしまうのである。<文/小林ていじ>
バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。
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