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移動距離日本一。200km以上走る最長ローカル列車に乗ってみた

―[シリーズ・駅]―
 山や海、農村の田園地帯など豊かな自然の中を走るローカル線。都市部の路線と違ってのどかな雰囲気で、車窓の景色をボーッと見ているだけでも心が癒される。  そんなローカル列車は基本的に運行区間が短く、その多くは100キロにも満たない。だが、なかには普通列車なのに200km以上を走る長距離列車も存在する。  幹線と呼ばれるローカル線ではない路線であれば、敦賀(福井県)~網干(兵庫県)、黒磯(栃木県)~熱海(静岡県)などの長距離列車もある。だが、沿線には人口密集地帯が多く、車窓の景色を楽しむような雰囲気ではない。

最長ローカル列車は始発列車だった

早朝発ゆえに寝坊は禁物だ

早朝発ゆえに寝坊は禁物だ

旭川発稚内行き普通列車

旭川発稚内行き普通列車

 今回紹介するのは、宗谷本線の旭川発稚内行きの普通列車。ローカル線としては日本一運行区間の長い列車(※’20年7月時点)で、筆者は昨年9月に乗車。特急列車を除くと、乗り換えなしで稚内まで行けるのは、旭川発の1日1本のみ。それも早朝6時3分発のため、これに乗るには前日のうちの旭川入りが必須だ。
イラスト入りの宗谷線のプレート

イラスト入りの宗谷線のプレート

 ちなみに始発の旭川駅は、2010年に高架駅化。近代的かつ巨大な駅舎は、旅情をあまり感じさせるものではないが「稚内」と行き先が表示された駅の電光掲示板、列車側面の行先標を見ると、さすがに旅の気分が高揚してくる。  宗谷本線はほとんどが非電化区間で、2両編成の列車は気動車(ディーゼル車)。しかも、座席はロングシートではなく車窓の景色が眺めやすい通路を挟んで2席ずつ並ぶ仕様。座席の向きを変えることで4人掛けのボックス席にもなり、長時間の列車旅にはよさそうだ。
車内の様子。出発直前に半分以上の席が埋まっていた

車内の様子。出発直前に半分以上の席が埋まっていた

塩狩峠駅

塩狩峠駅

 半分ほど席が埋まった状態で出発し、朝もやの中を一路北へ。その後、列車は40分ほどで塩狩駅に到着。この駅は1903年に起こった実在の列車事故をモチーフにした三浦綾子の小説『塩狩峠』の舞台になった場所で、事故で亡くなった主人公のモデルになった人物の顕彰碑がある。ほかにも復元した三浦綾子の旧宅を塩狩峠記念館として公開。執筆部屋や愛用の品々、小説の資料などが展示されている。今でもファンが訪れ、地元の観光名所になっている。

日本なのに車窓の景色は外国っぽい?

名寄駅からは列車は1両に

名寄駅からは列車は1両に

 そこからさらに1時間ほど乗っていると、今度は名寄駅に到着。旭川以北では稚内に次ぐ規模の街で、途中駅で乗ってきた通学の高校生はほぼ全員が下車。終点まではまだ180km以上も残っているが、ここから先は1両編成となる。
豊清水駅

豊清水駅

音威子府駅

音威子府駅

日本最北の駅そば

日本最北の駅そば

 名寄からは沿線住民の数も一気に減り、道北内陸部をひたすら北へと進む。途中には日本最北の駅そばが食べられる音威子府駅があったが停車時間がわずか3分で、しかも営業時間前だったので断念し、後日訪問してきた
気分はまるで『世界の車窓』から?

気分はまるで『世界の車窓』から?

 景色も牧草地帯に加え、手つかずの原生林のような場所をひた走る。まるで海外の列車に乗っているような気分だ。
幌延駅

幌延駅

 そして、20分以上の停車時間がある幌延駅を過ぎると、いよいよ列車は宗谷本線のハイライトである湿原地帯のサロベツ原野に。初夏から初秋にかけて100種類以上の花が咲き、その一部は車窓から眺めることもできる絶景エリアだ。
車窓の利尻富士

車窓の利尻富士

 そのサロベツ原野を抜けると、宗谷本線は海沿いを通るルートとなり、目の前には日本海。晴れた日であれば、海を隔てて利尻島の利尻富士もばっちり見える。なお、サロベツ原野からも見ることができ、乗客の多くが窓にカメラを向けて原野越しの利尻富士を撮影していた。
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終着駅は日本最北端の駅
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フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。

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