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同僚が感染死。コロナウイルス清掃員が直面する医療現場の壮絶とは

 緊急事態宣言が解除され、多くの人にはかつての日常が戻る希望が見えてきた。しかし、医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーは、終わりの見えない恐怖といまだ戦い続けている。最前線で治療にあたる医師や看護師の疲弊はもちろんだが、そうした医療環境を支える人たちにまでは、なかなか光が当たらない。

コロナ患者の病棟を除菌・消毒する仕事

 神奈川県にある、ある総合病院で“水際”に立つAさん(39歳)は、日夜コロナウイルスの殲滅に当たるコロナファイターだ。コロナ患者の受け入れ重点医療機関である総合病院で、除菌・消毒作業を請け負っているのだが、Aさんが話す現場は壮絶だ。 「コロナウイルスに罹って要入院と判断された重傷者のベット周りを消毒したり、シーツの洗濯もします。念には念を入れた対策は講じていますが、それでも感染リスクは高く、死を覚悟しなければならないと思ってやっている。医療従事者の家族ということで、僕だけでなく妻や子供が言われなき差別を受ける可能性もあります。それでもこの仕事は、誰かがやらなくてはならないんです」  3月下旬――。既存の清掃業者は、リスクの高い感染病棟に入ることができなくなった。そこで、これまでに羽田空港をはじめとする大規模施設で除菌・消毒の実績があるウイルス除菌研究所に白羽の矢が立った。Aさんの勤務先だ。 「一般の方は清掃と除菌・消毒を同じような作業と思うかもしれませんが、実情はまったく違います。清掃はゴミやホコリを除去する作業。一方で除菌・消毒は目に見えないものが相手。細菌やウイルスを次亜塩素酸ナトリウムや消毒用エタノールなどの除菌液で拭き取り、あるいは噴霧して消毒するんです。コロナウイルスに対しては、医療機関で使用実績のあるドイツ製薬剤を使っています」  すでに1か月以上、“レッドゾーン”と呼ばれる危険区域で作業を続けているAさんだが、労働環境の過酷さや精神的負担は、当初想定していた以上にシビアだった。 「日常的な手洗いに加え、作業エリアへの入室前後には必ず全身をくまなく消毒します。防護服、防毒マスク、ゴーグル、手袋、シューカバー、ヘアキャップを付け、まず清掃から始める。その後、床、壁、窓、天井、ドアノブなどを消毒します。また、患者さんのベッドシーツなどリネンの交換、消毒と医療機器や医療廃棄物を収めるボックスなどを含め、レッドゾーンから外に持ち出すものはすべて消毒しなければならない。通常の何倍もの行程を経なければならず、非常に時間がかかります」

業者を含む一般人の立ち入りが禁止されたレッドゾーン。患者の家族であっても入ることは許されない

暑く、息苦しい防護装備で行う過酷な消毒作業

 患者との接触もあるリネン交換や、医療廃棄物の処理は特に感染リスクが高い。ストレスフルな環境は言わずもがな、長期化すれば肉体的な疲労も重くのしかかる。 「防護服、防毒マスクを着用しての作業は、現在の気温でもとても蒸し暑くて息苦しい。まさに体力勝負です。僕を含めた作業スタッフは毎日PCR検査を受けていますが、家族への感染防止のため数日は自宅には帰らず、病院近隣のホテルに寝泊まりを続けています。そうした面での負担もあります」

ドアノブや手すりなど、人の手が触れやすい場所は特に重点的に拭きあげる

ウイルスが付着した医療廃棄物の取り扱い時は、特に慎重さが求められる

 業務はもちろん、自身の感染予防も徹底しているというAさんたちだが、「それでも防ぎきれなかった」という悔しい思いが、現在何よりも心の支えになっている。実は4月初頭、スタッフのひとりが新型コロナウイルス感染症で死亡しているからだ。
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「いつ感染死してもおかしくない。覚悟はしています」
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