お笑い界は“第7世代”が席巻しているが、若くして売れる芸人はほんの一握り。お笑い養成所を出ても、なかなかテレビに出れずアルバイトをしてチャンスを待ち続ける芸人も多い。しかし、この新型コロナウィルスの影響で、経験を積む舞台も、バイトすらなくなる芸人が続出。ブレイク前の芸人たちは一体、どう暮らしているのか？　今回は「アメトーーク！」（テレビ朝日系列）の“ろくでなしブルース芸人”にも出演して話題となった、吉本興業所属で芸歴17年目の武井志門さんにお話を伺った。 ――まず、コロナ後の仕事状況を教えてください。 武井志門（以下、武井）：いくら「アメトーーク！」に出ていても、基本テレビ出演は0です。仕事は劇場のライブ中心で、月5～6回ほど渋谷「無限大ホール」や新宿「ルミネthe吉本」に出ていましたが……それもコロナの影響で全部中止になりました。事務所が出番が決まっていた劇場の“半値のギャラ”はもらえる配慮をしてくれて、吉本の優しさは感じました。劇場仕事は一気になくなったので、現在は映像配信によるイベント中心に稼がせてもらっています。実は人件費とか劇場費がかからないので配信の方がギャラは良いんですよ。 ――配信も芸人の稼ぎの柱になりつつあるのですね。 武井：僕は配信系に強い吉本の社員さんと仲良くさせてもらい、それで声かけてもらっています。でも、なかには“無許可配信”をしている芸人もいますよ（笑）。でも、吉本は所属芸人が多すぎるので、会社側も「社内の誰かに通してるだろ？」と思いあまり確認しなかったりします。僕も昔、事務所に許可得ずに映画に出ましたが、結果バレませんでしたから（笑）。某大物芸人さんも地方のCMに出て、さすがにそれはバレて怒られてましたね。その方のマネージャーが旅行したときに見られちゃったらしくて。闇CM出演ですよ（笑）。 ――闇といえば、この状況では闇営業もできませんね？ 武井：さすがにあの事件以降、闇営業関連の案件はないですよ。“表”と言うのもおかしいのですが、会社を通したお祭り、学園祭、遊園地、イベントなど営業の仕事もコロナの影響でなくなりました。まぁ、僕は知名度がないので営業仕事もないですけどね。そこそこ知名度があり、営業中心で稼いている人はかなり辛い状況だと思います。 ――ちなみに、武井さんの月の給料は？ 武井：芸人としては2～3万円でしたね。まぁ、それがコロナでほぼ0円になったという状態です。もちろん、それでは妻子ある身なので生活はできないので、アルバイトをしていました。5つのバイトを掛け持ちしていて、月20万円ぐらいは稼いでいたかな、確か。 ――どんなバイトだったんですか？ 武井：先輩芸人のもんじゃ焼き屋や、新宿のイベントスペース、あとはソフト・オン・デマンドさんがやっている「女子社員酒場」で司会兼盛り上げ役など（苦笑）。もんじゃ焼き屋さんからは休業が決まった際、「少額だけど受け取って」と“お手当”は頂きました。本当に優しいですよね。コロナ以降、みんな芸人はバイトに困っていて、僕は仲間から警備のバイトを紹介してもらいました。国が管理している土地の警備で、そこを巡回する仕事です。バカデカい廃墟みたいで、中に落書きもあるし、幽霊も出そうで……。もしヤンキーが女の子とエッチしていてその現場を見ちゃって、僕もヤラれちゃったらどうしようってヒヤヒヤしながら回っています。 ――収入激減で生活は大丈夫ですか？ 武井：稼いでいる妻がいるので、どうにか（苦笑）。もう頭が上がりません。あとは……借金ですよ。ツイッターに『お金借りに行くから待っててね　最初に訪れるのはあなたのところかもしれません』って半分くらいボケでツイートしたんです。そしたら、本気にしたファンの方が『10万あれば足りますか？』とメッセージが来たんです。渡りに船と交渉して、結果11万円借りました。 ――ファンからお金を借りる……。 武井：ファンの方からは「分割でもいいから1年以内に返してくれればいいよ」と仰っていただきました。ちょうど家賃の支払いに困っていたので、それに充てようかと思います。奥さんとはお財布が別で、僕が家賃や光熱費を払って、奥さんは主に食費を出しています。 ――ちなみに、過去一番つらかった、変なバイトはありましたか？ 武井：大昔ですが、野外露出をするエロ本の男優みたいな仕事です（笑）。都内各所を巡りながら、裸の女性が町中に登場して“驚く素人役”でした。5ヶ所撮るので、5人の素人を演じるために都度、服を変えていました。最終的に服が足りなくなり、最後には舞台衣装で出演し、会社や知り合いにバレるかな？と怯えていましたが大丈夫でした。あと辛かったのは……倉庫バイトかな。初日に倉庫長みたいな人が朝一番で「お前ら人間扱いしねえからな！」と宣言して、あまりにムカついたんで先輩と共に制服を全部海に投げ捨てましたね。