更新日:2020年06月27日 15:20
ライフ

コロナ感染者が出たタワマン、住民の間で何が起きたのか?

感染者が出たタワワンで起きた住人同士の軋轢

 では、実際に感染者が出たマンションでは何が起きたのか紹介しよう。東京・湾岸エリアにある某タワーマンションに住む40代の男性の証言。 「感染者が出たらしいという情報が、4月上旬に別の住民からLINEで回ってきた。その後、エントランスに、コロナ感染者が出たことを知らせる貼り紙が一時的に掲示されていました。これを機に、住民の間で“犯人捜し”が一斉に始まった。『先週、エレベーターで咳をしていた女性が〇階で降りた』『〇〇号室のご主人はよく中国に出張していたらしい』などと、真偽不明の噂が飛び交いました。感染を恐れてマンションから一時的に避難した人もいます。さらに感染者の部屋番号を公開すべきと主張していた人もいました」  このタワマンでは、ある住人が感染者だという噂が巡り、のちに非感染者だと判明するなど住民同士が疑心暗鬼に陥ったという。  感染者が出たというのは事実なのか。管理する三井不動産レジデンシャルサービスに問い合わせたところ、「個別の案件についてはお答えしかねる」と回答。ただし同物件を扱う不動産仲介業者に聞いたところ「4月中旬に感染者が1人出たと聞いている」と認めた。  前出の住人によれば、エントランスの貼り紙はその後、すぐに剝がされたという。資産価値が低下するので周知すべきではないという意見があがったからだ。前出の三井不動産RSは「一般論として」と前置きしたうえでこう答えた。 「感染者が出た場合を含め、コロナ対応などは住民様による管理組合が主導で決定しています」  こうしてコロナ対応に関する住民のコンセンサス策定が急がれるなか、会議が紛糾している管理組合も少なくなさそうだ。  江東区・豊洲エリアのタワマン管理組合の役員を務める40代男性は話す。 「目下の議題は、現在閉鎖中のジムやキッズルームをどうするか。再開は時期尚早とする声がある一方、閉鎖されたままだと共益費が払い損だと主張する人もいる。再開するにしても、今後の感染予防にかかるコストをどうするかという問題もあり、頭が痛い。閉鎖されていた間の施設管理費の一部について、運営委託先の業者に返還を求めようという動きもあります。しかし、われわれ管理組合の役員は、委託先の業者から接待を受けていて、あまり大きくは出られない事情もあるのです」  住人の分断や、施設を巡るいざこざは各地で起きている。パンデミックが浮かび上がらせたタワマンの闇はあまりにも深い。
タワマン

写真はイメージです。本文と関係ありません

<文/ルポライター・奥窪優木+SPA!取材班 撮影/SPA!編集部> ― コロナと五輪「激変する首都圏不動産」―
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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