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ユーミン罵倒発言の的はずれ。安倍夫妻とは昔から仲良しなのだが…

矛盾する要素を受け入れることを、知性と呼ぶ

 常識的には、安倍総理夫妻と仲良しなだけのユーミンと、薄汚い犯罪を重ねてきたチャック・ベリーを同列に見るわけにはいきません。でも、このたびのユーミンの発言にがっかりした人たちの目には、ただ交友関係があるだけでも罪だと見えたのでしょう。  だとしても、それは作家としての評価をくつがえさなければならないほどの重大事なのでしょうか? “ったく、ユーミンもしょうがねえなぁ”ぐらいの気持ちで、それでも数々の名曲を残してきたことに敬意を表することすらできないのでしょうか?  かつて、オバマ前大統領(59)は、カニエ・ウェスト(43)についてコメントを求められた際、例の落ち着いた声のトーンで、微笑みながらこう答えたといいます。  <バカ野郎だけど、才能は認める>(『The Atlantic』2012年5月  American Mozart より)  もし、“本当に”荒井由実時代の音楽を愛しているのならば、憎き安倍総理夫妻と価値観を共有する人物だったとしても、人の心を揺さぶる美しい楽曲の数々を生み出せるという事実を受け入れる必要があります。  そのように矛盾しあう要素を仔細に吟味することを、知性と呼ぶのかもしれないのですから。 <文/音楽批評・石黒隆之>
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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