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限られた収入で高級腕時計をお得に楽しむには? 腕時計投資家・斉藤由貴生の考え

この中でもっとも売りやすいのは?

カルティエパシャ38mmパワーリザーブコンビ

カルティエパシャ38mmパワーリザーブコンビ

 このなかでもっとも売りやすいのはB。なぜかというと、相場がわかりやすいからです。  例えば、Bの価格帯が30万~40万円だとしたならば、「30万円で買えば29万円ぐらいで売れるだろう」という予測ができるのです。  Bは定価100万円クラスの高級モデルで、マニア界隈ではそれなりに知名度がある存在。「29万円ぐらいだったら遊び感覚で買っても良い」という需要が考えられるのです。  そして、次に売りやすいのがAです。Aも一定のファンがいるモデルで、Bと同じような感覚があります。ただしAの場合、Bと比べて“程度が悪いモノ”が多い傾向にあります。キレイなモノは購入後の満足度が高い半面、購入額も高めとなる場合があるでしょう。そうなると、「いくらぐらいで売れそうか」という想定がしづらいのです。  最後に、もっとも売りづらいのがCだと言えます。CはAやBと比べて知名度がないため、「これが欲しい」という人がどのぐらい存在しそうかという読みが難しく、内容的にも割高感がありました。  さらにCと同じ価格帯で、Cの後継モデルが売られているのですが、そちらのほうがより高級な要素を多々持っているのです。具体的には、ムーブメントが上級、裏蓋がガラスになっており、ムーブメントを見ることができる、文字盤が高級仕様といった具合です。  のちほど詳しく説明しますが、Cは、このなかでもっとも売りづらいのです。ですから通常であれば、最初に天秤から落ちるはずでした。

わかっていても売りづらいCを選んだ理由は?

 しかし私は、そのときあえてCを選びました。なぜなら、このときパシャが欲しいと思った理由こそ「Cの見た目に惚れ込んだから」だったからです。  また、私が選んだCのパシャは当時、10年ぐらい前から「いつか買おう」と思っていたのですが、これまで述べてきたような懸念があったため、ずっと後回しになっていたということもあります。  このCのパシャがなぜ売りづらいかというと、それにはいくつか理由があります。
カルティエ・パシャ

パワーリザーブインジケーターと文字盤模様のバランスがとても美しい

 まず、相場がわかりづらいという難点があるのですが、このパシャの場合、程度が悪いモノが多いことによって、相場が特にわかりづらいのです。  通常、高級腕時計の場合、程度が悪いということはあまり多くなく、程度が悪いモノが売られる傾向があるモデルの場合でも、「程度の良い」モノの相場は、ある程度決まっているのです。  しかしこのパシャの場合、程度が悪いモノの相場はそれなりに安定している一方で、程度が良いモノの相場が安定しなかったのです。  私としては、「程度が良いモノ」が欲しかったのですが、売る場合は「程度が悪いモノ」の相場を想定しなければならなかったのです。ですから、このパシャを買うということは、10万円ぐらいの損をする覚悟が必要だったわけで、私としては勇気のいる決断となりました。
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パシャは高く売れたのか?損をしたのか?
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1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

もう新品は買うな!もう新品は買うな!

もう大量消費、大量生産で無駄遣いをするのはやめよう


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