石坂茂氏(IBJ代表)、馬渕磨理子(筆者)
いま、日本には「退会者の2人に1人が結婚する」結婚相談所があります。
株式会社IBJが運営する直営結婚相談所の「IBJメンバーズ」は成婚率50.8%(※1)。さらに同社が運営する日本最大級の結婚相談所ネットワークである「日本結婚相談所連盟」は、登録会員数6万6,618名、成婚者数8,258名と業界NO.1(※2)を誇っています。そんな日本最大の婚活会社IBJは、他にも婚活アプリや婚活パーティー、さらには成婚後のライフデザイン分野(ウエディング、ハネムーン、保険、住宅)など複数のサービスを展開しています。
※1 2019年1月~12月の主要コース実績
IBJでは一定期間内における全退会者のうち、成婚退会者の割合を『成婚率』としています。
※2日本マーケティングリサーチ機構、2020年9月調査、大手結婚相談所・連盟を対象。
2019年9月~2020年8月累計、日本結婚相談所連盟(IBJ)に登録する会員様同士の成婚者数
そんなIBJが、2019年1月に老舗の結婚相談所「サンマリエ」、2020年5月には全国50店舗の結婚相談所を展開する「ZWEI」をグループ会社化したニュースは業界に大きな衝撃をもたらしました。
なぜIBJはいま、M&Aを積極的に実行しているのでしょうか。
前回のインタビューに続き、M&A実行の背景、石坂氏が力を入れる地方の婚活支援について伺いました。<聞き手・馬渕磨理子>
同業二社のM&Aをした背景
馬渕:直近、同業の「サンマリエ」「ツヴァイ」二社の大型M&Aをされていますね。
石坂:創業40年を迎えるサンマリエのブランド力とIBJの婚活サポート力のシナジー効果により、さらなる業績拡大や会員数、成婚者数増を期待して買収しました。
馬渕:サンマリエは連結後約1年で黒字化に成功しています。どのようにしてサンマリエを黒字化したのですか?
石坂:サンマリエのスタッフには「入会営業も大事だが、成婚(=婚約)までサポートする方がもっと大事だ」という成婚重視のIBJの考え方に切り替えてもらいました。
馬渕:成婚が大事、という理由は?
石坂:成婚率が上がれば、サービスに対する信頼度が高まります。また、お客様の喜んでいる姿を見てスタッフのモチベーションもあがります。そのため、入会させるためのノウハウやマーケティングではなく、お客様の結婚をサポートする技術やノウハウを研修で徹底的に教えました。
馬渕:なるほど。入会ではなく、成婚(=婚約)にコミットせよ、ですね。さらに、昨年はイオン子会社の結婚相談所ツヴァイも完全子会社化しました。ツヴァイ買収の理由も教えてください。
石坂:地方の婚活支援を飛躍的に加速させるためです。
馬渕:地方の婚活?
石坂:ツヴァイは全国50店舗展開しているため、地方の婚活会員基盤を拡大できると考えたからです。これはかなりの強みでした。実は、IBJは地方のマーケットで大きな課題を抱えていたのです。
馬渕:課題、ですか。
石坂:IBJの直営結婚相談所は、主に東名阪を中心に大都市圏に展開しています。そのため地方の登録会員数が少なく、なかなか地方で加盟店が増えませんでした。
たとえば、北海道の札幌以外の中堅都市や四国などでは、ほとんど会員がいない状況でした。それが、ツヴァイをグループ会社に迎え入れたことで、それぞれの都市で加盟開業営業ができるようになったのです。今後はさらに地方都市部でIBJの加盟店が増えていくでしょう。
馬渕:なるほど。婚活している方の目線でも、婚活は都市部が有利というお話は前回されていましたね。
石坂:そうなんです。地方のお客様を増やしたいという意図があったとはいえ、ツヴァイもまだまだ業績改善の余地があり、テコ入れを行っています。すでに1人当たりの会員の売上額も徐々に上がってきており、今期にも通期黒字化を目指したいと思っています。
馬渕:これまで、IBJの地方の加盟店が少なかったのはなぜでしょうか。
石坂:ニーズがあっても、喚起ができていなかったからです。地域の婚活支援は、都市部と少し異なります。
馬渕:地方と都市部の婚活の違いとは何でしょうか。
石坂:地方の婚活マーケットは、地域のステークホルダーで完結しているケースが多いのです。そのため、IBJでは地方自治体や地元企業、地方銀行とのつながりを強化しています。お客様が地方で結婚相談所に申し込むきっかけは広告ではなく、そういった人との繋がりが大きいです。
馬渕:広告ではなく、人のつながりで拡大していくイメージでしょうか。
石坂:そうです。地方では広告費はほとんどいりません。広告で入会者を集めるのには限界があります。広告は、人口100万人以上の東名阪の大都市には有効です。しかし、それ以外の地域は紹介と地域の繋がりで入会が決まるのです。
馬渕:なるほど。地方でフランチャイズ事業を展開する事業者や地元の建設会社、メーカーに納品をしている町工場など、いわゆる地元を愛する企業の影響力が大きいわけですね。
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』
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