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学校という閉鎖空間でまかり通る、不合理な校則の数々

川崎市の一部小学校で「体操服の下は肌着禁止」というルールが存在していたことが報道されるなど、不合理な校則の数々を問題視する声が高まっている。こうした動きを受けて、熊本市教育委員会が市立小中高校の校則を、人権や社会通念に照らして見直すと発表。学校における生徒指導の在り方が問い直されている。
鈴木涼美

写真はイメージです

その後の仁義なき制服少女

 下着は白なんていう校則があって、教員がそれを目視でチェックしているような実態が子供の人権侵害だというのは割と素直に理解できるが、ハンカチは白とか消しゴムは白だったらどうか。  別に性的なプライバシーの侵害はないが、合理的な説明はおそらく不可能。ちなみにどちらも私の通っていた私立の小学校の校則であった。筆箱は赤か黒の無地、鉛筆は緑色、靴下は灰色、湯飲みは瀬戸物、傘は黄色だった。  この学校に行ってよかった点は、この種の話題で笑いが取れることのみである。  川崎の一部の公立小学校で体育の時間に肌着の着用が禁止されていたことや、福岡の弁護士会の調査で明らかになった下着のチェックがメディアに取り上げられて話題を集めている。  まるでかつての軍隊の性器チェックだが、すでに性的な存在である子供が不快感を覚えるような学校の実態が問題視されるようになったのは進歩だし、各地の問題が瞬時に全国に共有されるようになったのもネット社会の良い点ではある。  学校というのは閉鎖的な文化が醸成されやすいので、おかしなことをしていたら全国に晒されるというのは抑止力になるし、各家庭が「うちの地域の学校はおかしい」という視点を持ちやすくもなった。  さて性的なアイデンティティの蹂躙はいち早くやめるべきとして、一部コメンテーターが言うように、他にも合理性を説明できないような校則はすぐなくしたほうがいいのか。  一部メディアでは「ツーブロックの髪型がだめ」という校則に「政府がそう言っている」からと学校が返答した例などが取り上げられているし、知人の通っていた学校には、生徒同士の郵便物ははがきのみOKという謎規則があった。  セーラー服や学ランなんていう珍妙な服の着用を義務付けられるのも、髪をおさげにしろと言われるのも、個別に理由を問い詰めたらおそらく要領を得ない返事しか返ってこない類いの規則でしかない。内申書なんていう脅迫まがいの制度やモンスターペアレントなんていう不名誉なラベリングがなければ、すでに守る人は少なくなっていただろう。  学校は不条理な命令に従う訓練と言わんばかりの規則を用意して効率の良い国民をつくろうとしてくる難儀な場所だが、実際、社会に出ても合理性を説明してもらえない決まりはいくらでもある。  売春がなぜダメか私を説得した学者はいないし、AVのモザイクに意味があるか否か、実際に性器にモザイクをあてがわれていた私にもよくわからない。  つまり校則とは、無批判に規則を守る訓練をさせたがる体制側と、おかしな規範だらけの世界をトンチとガッツで生き抜く訓練をすべき個人の闘いの序章なのである。  制服とローファーという縛りの間に生まれたルーズソックスのような文化もあれば、現在白髪交じりの歯科医師になっている友人は茶髪がダメだと言われてピンク色の髪にした過去がある。日本の風俗界が、売春がダメならと非本番型風俗を繁栄させたり、風呂屋で恋に落ちる大義名分でソープランドを編み出したりしたのも、不合理な校則に鍛えられた成果なのかもしれない。  皮肉な話だが、とりあえずすぐにはなくならないであろう校則は、そういったトンチを鍛えるための「かかってきなさい」的な存在と捉えるべきだろう。 ※週刊SPA!4月13日発売号より’83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。キャバクラ勤務、AV出演、日本経済新聞社記者などを経て文筆業へ。恋愛やセックスにまつわるエッセイから時事批評まで幅広く執筆。著書に『「AV女優」の社会学』(青土社)、『おじさんメモリアル』(扶桑社)など。最新刊『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』(発行・東京ニュース通信社、発売・講談社)が発売中

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