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4万字の小室文書に大衆が納得しなくても結婚は二人の自由

秋篠宮ご夫妻の長女である眞子内親王と婚約内定中の小室圭氏が、母親である佳代さんと元婚約者の男性との間の金銭トラブルについて、28ページ約4万字の説明文書を公表し、波紋を呼んでいる
鈴木涼美

写真:日本雑誌協会代表取材

誰が踏みたおし大金と、賢ぶるこそこひしけれ

「アイツ別れる時にデート代やプレゼント代返せって言ってきたんだけど」「マジ? ダサい! ケツの穴小さすぎ」と女同士で散々盛り上がり、当然ビタ一文返さず、むしろ買ってもらったヴィトンを大黒屋に持ち込んでいた私たちは、おそらく逆サイドでは「あの女、カネだけ使わせて逃げた上にあげたもの換金したらしい」「サイテーだな、最初からカネ目当てのバカ女の匂いがしたわ」と盛り上がられていただろうし、あらゆる事象はこのように、女から聞くか男から聞くか、朝日新聞が書くか産経新聞が書くかで別の物語が浮き上がる。  何が真か何が嘘かというのも曖昧で、世界には100%のカネ目当ても100%の愛もないし、100%の理性も100%の感情もないので、真実なんてものは常に物語が幾重にも折り合わさったぼやっとした総体でしかない。  延期発表から3年以上たつ眞子さまの結婚問題がここにきていろいろと動き出した。何より話題なのは小室圭氏が発表した4万字に及ぶ説明文書だ。  こんなにも言葉と脚注を駆使して説明した割には、公表後わずか4日で文書内では否定していた解決金を支払う意向だと報道され、大論文を読まされた大衆はなんだか踊らされた気分になる。  しかも文書は全部で36もの長い脚注がついていて、「『6』注19を参照してください」などと言及されるので迷路のように読みにくく、大衆のイライラは募る。  まるで自分のことを知性派だと信じたい学生が、「それらしい注釈をつけるとソレっぽくなる」と気づいて、必然性のないところで「ちなみにブルデューは」とかいう脚注を大量に加えた卒論のようだが、そういった学生は「読みにくい」とかいう評価すら、「読者より俺のほうが頭がいい」と受け取って大衆を見下し、悦に入る傾向がある。  そんな学生は往々にして感性より理性のほうが偉いと信じ、感情的であるより冷たいくらいがかっこいいとも信じ、主観や私情より何かとエビデンスだとかデータだとか言いたがるのだが、その辺りも録音テープの存在をチラつかせ、愛などは語らない小室文書と重なる。ちなみに学生たちが世界はエビデンスでできていないことを知るきっかけとなるのが恋愛やセックスだったりする。  さてこの文書を読んで、頭の青い学生のようだと思うのも、「私は読解できました!」と理解を示すのも、会話を録音するような男は気持ち悪いと思うのも、元婚約者のほうが嘘つきじゃんと思うのも、金銭的に余裕がないのにエリートに固執した揚げ句皇室にまで手を伸ばそうとしていると感じるのも大衆の自由であり、それぞれが立ち上がらせる物語のぼやっとした総体が世界である。  そしてかつて上昇婚を望んだJJ女子よろしく野心で結婚するのも、母を守るために出世するのも、頭いいぶって悦に入るのも、恋に夢中でいるのも小室氏の自由だし、大衆の理解が得られない男に見切りをつけるのも、その知性に惚れ直すのも、親離れして自由の身になるためなら男でも何でも使ってやるわと思うのもプリンセスの自由だ。  小室論文の「私情を挟まない理性っぽさ」と同じように、皇室の女性がこんな男と結婚するべきではないという「私情を挟まない理性っぽい」助言もあまり意味がない。恋愛なんてそもそも、それぞれの身勝手な物語の、ギリギリの擦り合わせによって成立するものだ。 ※週刊SPA!4月20日発売号より
’83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。キャバクラ勤務、AV出演、日本経済新聞社記者などを経て文筆業へ。恋愛やセックスにまつわるエッセイから時事批評まで幅広く執筆。著書に『「AV女優」の社会学』(青土社)、『おじさんメモリアル』(扶桑社)など。最新刊『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』(発行・東京ニュース通信社、発売・講談社)が発売中

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