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ネットビジネスに参入するシニアたち。“中高年の4K”に寄り添う

ハードルは低いが一生モノ。「磨き」の奥深さを知る

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丹波氏が趣味で磨いた作品。石の周りを磨き、絵柄を浮き立たせた

 カネをかけずに人を喜ばせる手段としては、「磨き」は最適かもしれない。山形県で研磨業を営んで50年、1000万台近いデジカメや携帯電話のボディ、山形新幹線の先頭車両など、さまざまなものを磨いてきた、この道の匠・丹波隆男氏(71歳)に醍醐味を聞いた。 「個人も法人も問わず、依頼者にとっては、お金をかけてでも綺麗にしたいほど大切な品物だということ。そういう思い入れを感じながら磨いています。そうしていると自分も精神的に磨かれ、鍛えられていくんです。磨き続けていることで心身ともに活性化しているのか、今まで、健康診断で引っかかったこともないんですよ」

趣味と副業を両立。メルカリで販売も

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黒いアルミ(右)を研磨してピカピカのお猪口(左)に

 体にも心にも良い影響をもたらし、なおかつ作業結果が人間に感動や喜びをもたらしてくれる「磨く」という行為。定年後のシニアが取り組むには最適だという。 「仕事にしようと考えたら道具は高額ですし、技術も要しますが、趣味の範囲であれば簡単。心身の健康にはもちろん、手先を使うのでボケ防止の効果もあると思いますし、定年退職後に始めるにはとてもいいですね。工具もホームセンターで数万円で揃うし、磨く対象も、家にあるものから始められます。スプーンや鍋をピカピカに磨いたら、奥さんも喜ぶでしょう」  なかでも、カネもかからないうえに扱いやすい点で、石は初心者が最初に磨くのに最適の素材だ。 「平凡な石ころだって、ちょっと手を加えればデザイン性が出るし、新婚旅行で拾ったような、思い出の石を磨くのもいい。ついでに夫婦のイニシャルを彫ったり、イヤリングやネックレスにアレンジしたら最高でしょう。磨きは女性のお化粧と似ていて、同じ作業をしても、日によって仕上がりが変わるのが奥深く面白いですね」  メルカリなどに作品をアップすれば数千円の値がつくことも。元手はタダ。錬金術となるか。
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丹波隆男氏

【磨きの達人 丹波隆男氏(71歳)】 磨屋代表。数々のコンテスト、フェスティバルでの入賞経験を持つ。時には磨くだけではなく、模様や文字を彫刻することもあり、その仕事は工芸品の域 <取材・文/鶉野珠子(清談社)>
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