仕事

新人時代の「仕事ができない」無力感を抜け出す方法

新人と先輩を「仕事の出来」で比べること自体ナンセンス

 心の問題には、こうした人間関係の説明が効果的です。自分が完璧ではないように、相手もまた完璧ではない。この認識が相手に対する誤った幻想を壊してくれるからです。  相談者はその先輩について、「仕事のできない自分」と「仕事のできる相手」という関係で考えていました。この幻想を前提にしてしまったら、どれだけ色々考えても、「自分が間違っている」という結論にたどり着いてしまいます。だから、苦しむことになるのです。  その先輩は5歳年上。相手の方が仕事ができるのは確かです。しかし、相談者は入社2年目。しかもコロナ禍によるリモートワークが原因で、実質まだ一年も働けていません。そんな新人と先輩を「仕事の出来」で比べること自体がナンセンスです。  本当に仕事ができるなら、後輩にイキり散らしたりしない。そう意識させた時に、相談者はその悩みから抜け出すことができました。それと同時に別の人物のことを思い出しました。

会社の先輩と恩師の違い

 その人物とは高校時代の恩師です。その恩師はスポーツの世界では名が知られていて、指導者を引退した時に次のようなコメントを残していました。「スポーツで強くても、人間性が欠けていることはある。しかし人間性が優れているならば、スポーツも強い」。  その恩師のことを意識したとき、相談者は「自分は後輩がわからないことを丁寧に教えられる人間になろう」という心構えを持ちました。そしてその先輩に関しては、仕事上の指摘は素直に受け取る、人格攻撃は「ああまた調子に乗ってるな」とスルーする、という方針を立てました。  仕事ができる先輩を意識していた時は、ネガティブな思考と感情が止まらなくなる。高校時代の恩師を意識した時は、「自分はこういう人間になろう」という心構えを作ることができる。このように心は人間関係でできています。そして、その人間関係を意識することで、心を安定させることができます。  自分はこの仕事に向いていないのではないか。新人時代に仕事の適性について悩んだら、悩むきっかけになった人間関係を思い出してみてください。  相手が理不尽な要求をしているのではないか。相手の話を真に受けず、話半分で聞いてもいいのではないか。相手との関係を見直すことで、悩みに答えを出すのではなく、悩みそのものを解消できるかもしれません。 佐々木
コーチャー。自己啓発とビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツ「ボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ「星を辿る」。著書『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)が発売中

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