仕事

中退や転職など「焦り」が理由の場合は失敗する

いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第258回
佐々木

写真はイメージです

「自分に向いている仕事は何か」という悩み

 自分に向いている仕事は何か。自分が納得できる働き方は何か。大学生活もそろそろ終わりが見えて来る三年生以降や大学院生になると、「仕事」や「働き方」といったテーマが現実味を帯びてきます。私が相談を受けたある大学院生は「自分は大学院を中退して、別の道を探すべきなのではないか?」という悩みを抱えていました。  この相談者は理系の大学に通っていましたが、プライベートではファッションに関する活動をしていました。具体的には自分で洋服を作って販売したり、ファッションに関する雑誌を作ったり、また、その雑誌が名刺代わりになって人脈が広がり、音楽系のアーティストに「一緒に洋服を作ろう」と提案されたり、個人事務所を開いてるデザイナーに「雑誌作りに協力する」と申し出られたりしていました。  このようにファッションを通じてプライベートは充実していましたが、だからこそ大学院で取り組む「理系の研究」に対して、「これは自分にとって必要なことなのか」と考えるようになっていました。そんな自分の心境を父親や担当の大学教授に打ち明けたところ、「焦りすぎではないか」と諭されて、幾分落ち着いたものの踏ん切りが着くには至らず、私に相談を申し込んだという経緯です。

焦りの正体を言語化する

 実際に会って話を聞くと、この相談者は「20代はこれをやる、というものを見つけないといけないのではないか」と考えていました。これまでの人生相談の経験上、そうした「自分の天職」が見つかるのはもっと後になるのが大半です。  天職は「誰に、何を、どんな風に」の3つのポイントについて、自分が納得できて、相手にも評価されて対価を受け取り、生計も成り立つという具体性が必要だからです。この具体性は実際に働き始めて試行錯誤を重ねるからこそ特定できます。  そこで私は「今の段階では『これ』という具体性ではなく、『こっち』という方向性を持つだけで十分ではないか」とアドバイスしました。自分の方向性を確かめている段階では、納得できる働き方にもまだ曖昧な部分があり、天職とは直接関係ないものも生活に入り込んでくる余地があります。  彼にとって、大学院での研究や、その先にある就職がこれに当てはまります。そうした自分の天職には直接関係ない経験や勉強も決して無駄ではありません。そうした回り道は天職が見つかった時に、その天職の肥やしになってくれるからです。  そもそも、この相談者はなぜ「20代はこれをやるというものを見つけないといけない」と考えたのか。心は人間関係でできています。彼がそう考えるようになったのは、ファッションを通じて知り合った「音楽系のアーティスト」と「個人事務所を開いているデザイナー」が影響していました。  人間には「自分の苦手分野であえて張り合って、相手に幻想を抱いて、自分に劣等感を抱く」という習性があります。この相談者は音楽について、「好きでライブもよく行くけれど、自分は歌が下手で才能がない」と自己分析していました。また絵に関しても、「壊滅的に下手」と自己分析していました。  その上で音楽やイラストを本職にしているアーティストやデザイナーと比較して、「自分よりすごい人がいる」と劣等感を抱き、「自分はもっと頑張らないといけない」と考えたのです。その結果至ったのが、「20代はこれをやるというものを見つけないといけない」という焦りであり、「自分は大学院を中退して、別の道を探すべきではないか?」という悩みでした。
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