更新日:2021年07月17日 18:59
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小山田圭吾の“いじめ自慢”と、90年代鬼畜ブーム。なぜ彼は間違ったのか

『90年代サブカルの呪い』に見る鬼畜ブームの明暗

 確かに、ミュージシャンの一挙手一投足に品行方正であるように求めるのは難しいことです。  また90年代のサブカル界隈では、あえて悪趣味な行動や発言を好む“鬼畜系”なるムーブメントがあったのも事実。小山田氏の“いじめ武勇伝”や、その内容を躊躇なく掲載した編集サイドの意向が、そうしたムードに支えられていたことは想像に難くありません。インターネットが普及していなかった当時、これが炎上することもなく、普通に流通していたのです。  けれども、小山田氏と編集サイドは、そのようなムーブメントの意図するところを完全に読み違えていたのではないか――そう論じているのは、『90年代サブカルの呪い』(2019、コアマガジン)の著者でミュージシャンのロマン優光氏(48)です。 90年代サブカルの呪い

悪趣味の意味をカン違いしている

 90年代・悪趣味カルチャーの輝きを知っているロマン優光氏は、小山田氏のインタビューをリアルタイムで読んで、当時でも嫌悪感を持ったといいます。偽悪や露悪趣味を誤解していたがゆえの事例として、小山田氏の一件をこう論じています。 <変な話ですけど、ギリギリのところでモラルを守るというか、モラルを理解した上で(当時としては)ギリギリのところで遊ぶのが悪趣味/鬼畜系だったし、何度も書いてますが、実際に鬼畜行為に及ぶことを推奨していたわけではないのです。  それを鬼畜行為の当事者として、著名なミュージシャンが反省もなく面白おかしく語るというのは、頭おかしすぎなんですよ、当時としても。普通に考えてリスク高すぎです。  誰も彼もが時代の空気に浮かれていたとしか思えないし、そもそも流行りに乗っかってみただけで、何もわかってなかったんだと思います。> (『90年代サブカルの呪い』より)
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薬物や不倫とは次元が違う
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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