更新日:2022年11月18日 20:58
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田代まさしに薬物を売った元売人が語る「週末シャブ中」の実態

17歳で覚せい剤に手をだす

 そもそも倉垣さんが覚せい剤に最初に手を出したきっかけは、ほんの出来心でした。中学生の頃から吸っていたタバコやシンナーの延長で不良の先輩から譲り受け、17歳の時に安易に手を出してしまったのです。  そして、上京してから6年間もの間、覚せい剤を使用していなかった倉垣さんは、ふとした出会いがきっかけで覚せい剤を使用してしまいます。その時の様子は「バーカウンターに座っているはずなのに、ふわふわのソファにドカーンと座り、そのまま温泉まで首に浸かっているような感覚」だったとのこと。    当時、酒井法子さん逮捕のニュースの再現VTRで、大阪で覚せい剤を使用していた頃を思い出し、「湧く」(興奮する)感覚を味わっていた倉垣さん。知人から使用をすすめられ、断るという選択肢はなかったそうです。

「週末シャブ中」の実態

 覚せい剤の恐怖はヤクザや芸能界など特殊な世界だけではなく、一般社会にも入り込んでいるといいます。倉垣さんから薬物を買っていた人たちの中には、平日は普通に働き、週末だけ覚せい剤を摂取している人たちも大勢いました。  薬物売人が一般人に近付くのは、どんな場所なのでしょうか。 「飲み屋やパチンコ屋、競馬場、違法賭博屋など。そして、ライトなイメージのあるマリファナはクラブやバー、レコード屋、アパレルショップなどで、興味のありそうなお客さんに声を掛けます」(倉垣さん)  毎日覚せい剤を摂取していれば、幻覚により暴れ回るなど目立つ行動を取るので、逮捕されやすい。  一方、普通に社会生活を送りながら適度に依存している人ほど周囲からはわかりません。じつは、彼らこそが薬物売人にとっては上顧客だといいます。
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売人は長く取引できる客を「作る」
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ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。

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薬物売人

田代まさし氏への覚醒剤譲渡で二〇一〇年に逮捕され、懲役三年の実刑判決を受けた著者。自らも依存症だった元売人が明かす、取引が始まるきっかけ、受け渡し法、人間の壊れ方――。逮捕から更生までを赤裸々に描く。