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田代まさしに薬物を売った元売人が語る「週末シャブ中」の実態

「愛せるものをひとつ見つけてください」

 また、倉垣さんは「これまでの僕の人生に登場したことがない不思議なキャラクターで、話をしているとワクワクさせられる」太田監督に促されて執筆を開始しましたが、この本は薬物に限らず、「依存」から人が抜け出すことに必要なものを示唆しています。  それは「」です。  自分を見つめ直すきっかけを作った太田監督はもちろん、常に寄り添って来た和尚、いつも応援してくれたご両親、そして出所後に仕事を用意していた仲間、過去を知りつつも受け入れ現在の妻となった女性など、倉垣さんと出会った人たちが掛ける温かい言葉が倉垣さんを今の生活へ導いたことがよくわかります。  そんな倉垣さんに薬物から抜け出せずに苦しんでいる人たちへのメッセージをお願いすると、こんな答えが返って来ました。 「大丈夫です。僕が抜け出せたのですから、あなたも抜け出せます。まず、何でもいいです。愛せるものをひとつ見つけてください」(倉垣さん)  あらゆる依存に苦しむ人たちは、今、このメッセージに耳を傾けるべきではないでしょうか。 <取材・文/熊野雅恵>
ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。
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薬物売人

田代まさし氏への覚醒剤譲渡で二〇一〇年に逮捕され、懲役三年の実刑判決を受けた著者。自らも依存症だった元売人が明かす、取引が始まるきっかけ、受け渡し法、人間の壊れ方――。逮捕から更生までを赤裸々に描く。
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