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田代まさしに薬物を売った元売人が語る「週末シャブ中」の実態

薬物売人にとっての上顧客

 適度な依存症者は、音楽、放送、出版、Web、デザイン関係など、クリエイティブな仕事をしている人が多く、創造力を高めるために使用するといいます。金回りも良く、逮捕されにくいことから、長く取引できるそうです。  薬物売人はこうした「逮捕されない品のいい客」を手放さないために、相手が求めても大量の覚せい剤を売りません。あえて少しずつ売ることによって適度に依存させ、長く取引できる客を「作る」のです。要するに、客は売人にコントロールされてしまう。  この点についてうかがうと、倉垣さんは以下のように回答しました。 「あるラインを超えると逮捕され、そこで一度は止まりますが、また始まります。あるラインを超えずに慎重に行動している者は、逮捕されずに地味にチョロチョロとやり続けています。どちらも抜け出すには、自分で気づくことができるかだと思います」(倉垣さん)

使用者には家族がいる人も…

六本木

倉垣さんは以前、六本木のバーでマスターをしていたという

 倉垣さんは地元大阪から上京後、六本木に24時間飲めるバーをオープンさせます。店は順調に売り上げを伸ばしましたが、昼過ぎに帰宅しては、店に戻る生活が続きます。そして、妻子とのコミュニケーション不足が原因で離婚。その寂しさと余ってしまった時間も薬物依存のきっかけになったとのことでした。  では、家族がいる人は覚せい剤には手を出さないものなのでしょうか。一概にはそうとも言えないと倉垣さんは指摘します。 「もちろん子どもの面倒をみたり、家族の用事が忙しければそれどころではないでしょう。しかし、子育て奮闘中のママさんにもシャブ(覚せい剤)好きの人がいます。家族があって子どもがいても、自分が一人で過ごせる時間とお金を自由につくることができる場合は、薬物に近づいてしまう人もいます」(倉垣さん)  薬物依存の恐怖は、今や一般社会と隣り合わせと言っても過言ではありません。
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“犯罪者たちのハローワーク”とは?
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薬物売人

田代まさし氏への覚醒剤譲渡で二〇一〇年に逮捕され、懲役三年の実刑判決を受けた著者。自らも依存症だった元売人が明かす、取引が始まるきっかけ、受け渡し法、人間の壊れ方――。逮捕から更生までを赤裸々に描く。
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