更新日:2022年11月18日 20:58
ライフ

田代まさしに薬物を売った元売人が語る「週末シャブ中」の実態

映画『解放区』に出演して

 仮出所後、かつての仲間のつながりでたこ焼きを焼く仕事をしていたある日、大阪・西成を舞台にした映画『解放区』の太田信吾監督から声を掛けられました。その頃、太田監督は覚せい剤の売人役を探しており、たこ焼き屋で偶然出会ったのが倉垣さんだったのです。  実はこの頃、倉垣さんは少ない回数ではあるものの、再び覚せい剤やマリファナに手を出していました。当時の行動範囲の中に売人や薬物使用者を見つけてしまったのです。「このままではいけない」と思いつつも、再び倉垣さんは薬を使用する生活に戻ってしまいます。  使用直後に尿検査がない限り証拠は残らない、警察に取引現場を押さえられるか、取引後に職務質問を受けなければ捕まることはない——。「大丈夫だ」という自信だけが、当時の倉垣さんの脳内を占めていました。  しかし、太田監督から『解放区』での薬物売人役での出演を引き受け、撮影の中で太田監督と話し合い、倉垣さんは再度自分を見つめ直します。そして、倉垣さんは誘惑の多い大阪の街を去り、離島へ移住する決意をしました。

更生にとって必要なこと

 現在、倉垣さんは自然に囲まれて健康的な生活を送っています。早寝早起きで仕事をし、家族と大笑いしている時が一番の幸せなんだとか。  また、薬物に依存していた頃にはなかった「自分や周りの人たちを大切にする気持ち」が今はあるとのことです。そして、和尚のような何でも話せる人の存在が更生につながったと振り返ります。 「自分のせいで人生が狂ってしまった人たちや心配や迷惑をかけた人たちがいることを後悔しています」(倉垣さん)  現在守りたいものがあるからこそ後悔を実感しているのかもしれません。
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いかにして「依存」から抜け出したのか
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ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。

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薬物売人

田代まさし氏への覚醒剤譲渡で二〇一〇年に逮捕され、懲役三年の実刑判決を受けた著者。自らも依存症だった元売人が明かす、取引が始まるきっかけ、受け渡し法、人間の壊れ方――。逮捕から更生までを赤裸々に描く。