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身を犠牲にするほど“エモい”。「推し」としてのホストに貢ぐぴえん系女子たち

幾らのお金を渡せるか、どれだけ自分を犠牲にできるか——。ぴえん世代の「推し」文化、そしてホストの搾取の構造を15歳から歌舞伎町に通い続ける現役女子大生ライターが解き明かす!

「繫がれる推し」に貢ぐ文化

ぴえん

イラスト/ツヅキエイミ

「宝くじで当たった100万円に価値はない。60分1万円で、100人のオジサンを相手してボロボロになったお金を、“推し”に使うから意味があるの」  私が取材したあるぴえん系女性は、体を売り続け、憔悴しきった顔でこう叫んだ――。歌舞伎町で自らを切り売りする女性のなかには、身を犠牲にするからこそ、推しに対する“尊さ”もまた強まるという価値観を持つ者もいる。  推し(おし)、小学館デジタル大辞典によれば「他の人にすすめること。また俗に、人にすすめたいほど気に入っている人や物のこと」という言葉だ。一般的に認知されたのは、国民的アイドルグループ「AKB48」のブームであろう。  大人数のメンバーのなかから一人を“推す”。CDの売り上げ枚数で競う“選挙制”を導入。SNSには自分の推しに対する愛情の表現として、数百万円を使ったであろうCDの入った山積みの段ボール箱や、グッズの「祭壇」を投稿するなど、従来のアイドルを応援する行為に“誇示消費”を植え付けたといえる。

「どれだけお金を貢げるか」がアイデンティティに

 推しを応援するという行為は布教的意味合いもあるが、どれだけお金を貢げるかにアイデンティを置く者もいる事実。  推しの対象はアイドルからアニメに広がり、YouTuberからライブ配信者、現在はSNSの普及によりフォロワー数百から数千程度のただの“素人”にまで到達している。  ある意味で、誰もが誰かの“推し”になれる時代。そのほぼ一般人に近い推しを応援するために、名前を覚えてもらうために、大金を費やす人も少なくはない。  ぴえん系の“病み”を愛する女性のなかには、前回触れた児童ポルノ違反で捕まった者に対して、イケメンという理由だけで金銭を渡す人もいる。 「お金なくて困ってま~す。誰か貢いでください~!」  無邪気な文面と、自撮り写真に、キャッシュレス決済のQRコードをSNSに投稿。すぐに女性たちは送金するのだ。そんな即座に“繋がれる推し”にお金を送るのが、ぴえん世代の新たな価値観なのだろう。
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繋がれる推しの最高峰はホストクラブ
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現役女子大生ライター。10代の頃から歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチを基に大学で「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。ツイッターは@chiwawa_sasaki

「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認

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