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身を犠牲にするほど“エモい”。「推し」としてのホストに貢ぐぴえん系女子たち

繋がれる推しの最高峰はホストクラブ

ぴえん

佐々木チワワ氏

 お金を使って応援する接客業の筆頭であるホストクラブは、今、空前のバブル期を迎えている。10年前は月に1000万円を売ったら街では話題沸騰だったが、今は1000万円を売ってスタートライン。  その立役者はやはりSNSだ。例えばInstagramで偶然見つけたイケメンが、たまたまホストだったから指名した。そんなホスト文化を知らない顧客が歌舞伎町に足を運ぶ機会が大幅に増えている。  現在、ホストクラブは歌舞伎町に約260店舗、約5000人ほどのホストが存在するとされている。そんな歌舞伎町の店舗で年間売り上げ&指名本数8年連続ナンバーワンである有名ホストの越前リョーマが、今年2月に出版した書籍のタイトルは『成功したいなら誰かの「推し」になれ』(光文社)である。  従来のホストは色恋営業や本気営業による恋愛関係での売り上げが主流だったが、今、最もホスト業界で成功しやすいと言われる営業法は「アイドル営業」。つまり、「恋される」より「推される」ほうがよしとされているのだ。  アイドルとホストの差異は「店に行けば必ず会える」ことと、「必ずLINEができる」ところにあるだろう。非日常がいつでも日常に転換されるような仕組みが存在し、いつしか推しが偶像ではなく日常との地続きであるように感じられ、推しが商品でなくなったあとでも自分だけは一緒にいられるような気がしてくる。そうした錯覚を、ホストは言葉巧みに与えてくる。「未来の関係性」に対する期待感を金銭に換える、“繋がれる推し”の立場を使った搾取といえるだろう。

誇示消費をしたくなる“仕掛け”

 さらに、ホストクラブには誇示消費をしたくなる仕掛けがたくさん存在している。例えば、毎日一番売り上げたホストがカラオケを一番金を使った女性の横で歌える「ラストソング」。ホストクラブの男女たちはカラオケの曲を歌いたいがために、数十万をかけて日々争うこともある。  さらには「飾りボトル」というものがあり、数十万~数百万円するこのお酒は、一度オーダーすれば毎回自分が来店するたびにテーブルに並べられる。すると、客からも他のホストからも、「アイツは大金を使っている」というのが一目瞭然となる。まさに“映え”であり、誇示消費だろう。飾りボトルはそうした推し消費に溺れる女性たちのステータスであり、ホスト女のコ両名の権威の象徴なのだ。  もちろん、女性客たちは自分の“推し活”をSNSに投稿する。ホストにシャンパンを卸した、いくら使ったという写真をネットに上げ、たくさんの“イイネ”をもらう。それだけ「推し」に貢いでいるというアピールになるとともに、特にホストクラブではそれだけの大金を稼げる=若くてかわいいという見立てが起きやすく、一種の自己顕示欲も満たされる。
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大金を支払ってまで満たされたい理由
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現役女子大生ライター。10代の頃から歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチを基に大学で「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。ツイッターは@chiwawa_sasaki

「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認

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