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ホスト、女性用風俗…“性”を切り売りして稼ぐ男たち。性処理扱いに病む若者も

水商売で働く人間にとって本来、“SEX”は一つのゴールのはずだった。しかし、現代は男性でさえ、その“性”を切り売りして稼ぐ時代になっている。15歳から歌舞伎町に通う女子大生ライターが導き出した、その理由とは―。

“枕ホスト=ダサい”の認識は過去のもの?

ぴえん

イラスト/ツヅキエイミ

「担当がおちんちんを挿入してくれたから、シャンパン卸しました。イエ~イ!」  歌舞伎町のホストクラブで、マイクを握った若い女性客は上機嫌にこう叫んだ。周囲のホストたちはこのカミングアウトに思える発言に驚く様子はなく、“いつものこと”と楽しそうに飲んでいた――。  ’65年、東京駅八重洲口に日本最初のホストクラブ「ナイト東京」が誕生し、以降、その時代の客に合わせた「イイ男」による接客がなされてきた。その中で脈々と受け継がれる共通した“美意識”があった。それは「枕をしたら男が廃る」というものだ。  枕とは、女性客と肉体関係を持つことで来店に結びつける営業方法だ。平成のホストを描いた累計発行部数150万部を超えた漫画『夜王』(集英社)でも、指名されてすぐに枕をしたら「安っぽい枕ホスト」というレッテルを貼られる、真の漢たるホストなら枕をせずに女性を魅了しろ、という価値観を何度も何度も描いていた。平成に活動していたホストや女性客側も“枕ホスト=ダサい”の認識のはず、だった。

SNSの普及によりホストたちの競争は激化

 もともとホストクラブという商業空間は、「強い男」と「弱い女」の役柄が誇張して演じられる一方で、「強い男」と「弱い女」の役割が転倒し、女性がカネで男性を買うという、女性主体で「イイ男」に貢いで楽しみながら“見せびらかすための消費”である「誇示的消費」を行える場として作用していた。  しかし、前回でも触れたとおり、SNSの普及により水商売の市場は拡大し、ホストたちの競争は激化。接客スタイルも、“恋愛系”から幅広く金銭を貢いでもらうための“推し”に変化。SNSが集客のための重要戦略の一つになり、“とにかく目立つ、とにかくフォロワー数を獲得”のため過激な投稿を行うものが一気に増えたのだ。  例えば動画のタイトルに「ホストが激白。一番つらかった枕のお話!」「ホストがどうしてもヤりたくて初回枕した思い出を語る」など、過激な性的な要素をかなりの確率で取り入れている。  さらにはSNSで興味を持ってくれた女性に対して、「俺を指名すれば絶対に枕できるよ!」といった営業をし、最近では初回指名で即SEXするホストが増加。このようにたくさんの客に枕をするホストを「鬼枕」と呼ぶに至る。  店舗の接客でも「お前ならヤれる」「俺、絶倫だから何回でもできるよ」といったセクハラまがいの接客方法で攻める者もいる。古くからホストクラブに出入りする女性客は彼らの行動を蔑むが、ぴえん系の女性客はそんな彼らを「鬼枕しか勝たん~!」と崇拝する。もはや枕=ダサいが通用しないのが、令和時代のホストなのだろう。
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多様な顔を求められて病む女性用風俗で働く若者
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現役女子大生ライター。10代の頃から歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチを基に大学で「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。ツイッターは@chiwawa_sasaki

「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認

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