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コロナ禍の貧困の現実…NPO法人の年越し炊き出しに密着した

限られた食糧でやりくり

まばらに若者や女性の姿もあったが、ほとんど取材NG。スマートフォンを使いこなしている人も多く、普通の若者と変わらないように見える

 緊急事態宣言が解除されたために減るだろうと思いきや、増加傾向は止まらない。「私たちにはコントロールできませんから、正直途方に暮れてます」と清野さん。衣類は十分な量が寄付されているが、食糧は供給量が限られている中でやりくりしている。企業や地域の施設などとも連携しつつ、どうにか対応している状況だ。 「最初はさざ波でした。それがいつの間にか波になって、今や津波です。その津波がいつ引くか誰にもわかりません。原因の一つは……人それぞれ事情は違いますが、給付金や緊急小口資金を取得しても次の手段がないという方が、生活保護も忌避した末に並ばれている印象です」  コロナウイルスの隆盛が原因の貧困がある一方で、それ以外の社会問題から炊き出しにたどり着く人もいる。 「地方で引きこもりをしていた人で、親との関係が悪くなって出てきたケースがいくつかありました。社会不安が増して、家庭で虐待やDVが増えたのも関連しているのでしょう」  引きこもりと同様、経済的問題に結びつきやすいのが精神・知的・発達障害などの「見えない障害」だ。2009年末にTENOHASIを中心とした医療・福祉従事者の共同研究チーム「ぼとむあっぷ研究会」が独自に調査した結果によると、知的機能に障害があると疑われる人が全体の30%以上、精神疾患を持っている人が41%。路上生活者の多くが、自己責任を超えた領域で「生きづらさ」を抱えている実態が浮き彫りとなった。 「障害を抱える人でも、日雇い労働などで仕事もあったのですが、やはり仕事の全体量が減ると選べなくなっていくんですね。体力やスキルもうまくマッチングしないんです。現場も切羽詰まっているので、配慮しきれず排除されていってしまう。相談に来る方の主流派はこういったコロナ前から困りごとのある人たちで、単純に仕事がなくなってしまいましたという人はむしろ少ないです」

困窮者に説明を迫る「制度」

 こういった問題は、「住まいの貧困」問題とも関連していると考えられる。 「無料低額宿泊所にいても自分がいじめられたわけではないのに、誰かが喧嘩しているのに耐えられずに出てきてしまったとか、自分は打たれ弱くてダメだという人がいます。あなたと関係ないでしょといっても『やっぱりいられない』と。そういった方を医療と繋げて、障害者手帳を取得してもらうといった例もありますね」  発達障害を抱えた人の中には感覚過敏を持った人もおり、シェアハウスや無料低額宿泊所の共同生活に耐えられず、路上生活に戻ってしまうのだ。自分の困りごとを説明することにも困難がある人は、必要な助けを求めることもできず、福祉からも見捨てられていく。この問題に関して、TENOHASIのHPには以下のような記述がある。 “福祉の「制度」は、もともと「困難を抱えた誰か」のためにつくられたものですが、それが固定化すると逆に「制度」が人を選ぶ――その「制度」が認めたタイプの人しか助けない――ということが起きてきます。” “そして、そのような方々が心身ともにぼろぼろになって、最後の力を振り絞って「制度」に助けを求めたとき、「制度」は疲れ果てた人々に対して、「自分がどのように困っていてどうして欲しいのか説明せよ」と迫ります。そして「制度」は、その説明に満足できないと「甘えてる」「我慢しなさい」「がんばりなさい」といって見捨てるのです。”  福祉を制度として固めるのではなく、個別ケースに合わせて組み上げていく。こういった柔軟な対応が必要とされているのだ。
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街は美化され、困窮者の居場所はなくなっていく
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