更新日:2022年01月06日 14:38
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コロナ禍の貧困の現実…NPO法人の年越し炊き出しに密着した

街は美化され、困窮者の居場所はなくなっていく

 2021年は東京オリンピックの開催年でもあり、街の美化が進んだ期間でもあった。その一方で、生活困窮者は目につく場所から排除され、その目的のために公共の力が使われることもあった。いわゆる「排除アート」だ。 「『排除アート』など、街の美化に伴う困窮者の排除はオリンピック前からありました。池袋駅前公園にある円筒型の『絶対横になれない』『夏は熱く冬は冷たい』ベンチとか。ちょっとした座れるスペースにもよくわからない鉄の棒が並んだりしました。豊島区でもオリンピックの前後から公園のリニューアルが決まって、しばらく閉鎖されたり警備員が配置されて夜間ロックアウトされたんですね」  行政が貧困に背を向ける実態は、生活保護の水際作戦などでもしきりに報道されている。「行政が一人一人の自立に対して背を向けているところはありますね」と清野さん。

DaiGoの差別発言に感じたこと

 行政の対応に限らず、一般市民の間でもホームレス状態にある人たちへの偏見や差別は根強い。昨年はメンタリストのDaiGo氏が差別発言をした件も記憶に新しい。 「あの発言を聞いた時、著名人がそういった差別発言をすることによって、襲撃事件や殺人事件が起こるなと思ったんです。君の発言のせいでね…と。結果的には叩かれたというか、思いがけず悪い方向にいかずよかったなと思いました。今は日本にもきちんと貧困があることが認知されてきているんだと思います。ただ、今後絶対揺り戻しが来ます。コロナによって貧困状態にあるというのは、ある意味『わかりやすい』ですが、その前から貧困だというと処遇がまた変わってきますから」  困窮者支援の最前線に立つ者として、コロナ禍で貧困が広範に拡大したことにより、世間一般の理解もある意味深まったのを感じるという。しかし貧困はいつの時代も身近にあり、その背景にあるのは必ずしも『理解を得られやすい』『わかりやすい』理由だけではない。貧困は自己責任ではないというその根本的な理解には、やはり地道な活動を続け、発信し続けていくことが必要なようだ。 <取材・文・撮影/大河内光明(@komei_okouchi)>
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