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なぜ、「親の批判」をできない人がモラハラ加害者になるのか?

親の加害性を受け継いで、上下関係にこだわる

「誰のお金で飯が食えてると思ってるんだ!」「誰に向かって口を聞いてるんだ!」「お前何様のつもりだ!」「そんなに文句を言うならこれまでお前に使った金を全部返せ!」  こんな言葉を加害者はよく口にします。これらは全て「上下関係を逸脱していること」自体に腹を立てているわけです。立場が下の存在は、上の存在を敬い、完璧なものとして扱い、恥をかかせることなく、感謝しなければならない。  そう考えているからこそ「親に批判を言うなんて……」という、一見「いいこと」のようなことを言うのです。でもそれは裏を返せば「自分より立場の低い奴からの批判なんてありえない、それ自体が間違っている」になるわけです。  これを認めない限り、加害者は変わることができません。立場が下だと思っている人からの批判を受け入れることができないからです。  親も間違える、自分も間違える。間違えた時には教えてもらわないと、自分を変えることはできない。変えられなければ、人を傷つけ続ける存在になる、ということを認める必要があるのです。  このようなことを伝えると「わかりました、考えてみます」「確かにそう言われたらそうですね」「こう思ってるからこそ、被害を訴えられること自体を認められなかったのかもしれない」と反応される方がほとんどです。

実は加害者から、たくさん出てくる親への批判

 そして次のプログラムの時にホームワークを書いてきてもらうと、そこにはたくさんの被害の経験が記されていることがほとんどです。 「言うことを聞かなかったら電柱にくくりつけられた」「寒い冬の日に外に追い出されて泣いても入れてもらえなかった」「初めて恋人ができたとき、その子の親の学歴のことなどを言われて反対された」などなど、枚挙にいとまがありません。 「今まで考えたこともなかったですが、よく考えたらひどいことだったなと思います」「時代だったのかもしれないけど、傷ついたことは覚えてる」「いま当時の年齢の子供を見ると、本当に小さくて驚く。あんなに小さかった自分にあんなひどいことをされたら、傷つくに決まってる」と話される方がたくさんいます。  親を批判できないということは、自分の被害を認められないということです。自分の被害を認められないということは、自分が傷つけてしまった人たちの被害も認められないということです。そして相手の被害を認められないということは、加害者から変われないということです。  裏を返せば、加害者変容にとって重要なステップの一つは「自分が傷ついてきたこと」を認めることに他ならないのです。それには親の批判もまた、必然的に必要だということです。
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被害者のためのDV・モラハラを見抜くポイント
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DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

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