ニュース

今の段階で皇位継承問題について決めておかねばならない理由/倉山満

日本国憲法に合わせて皇室の歴史を捻じ曲げるのは本末転倒

 以上は「日本の歴史を続けたいか」との価値観の共有である。では、具体的に、どのように行うか。  第四に、日本国憲法でも可能な方策でなければならない。皇室は日本国憲法どころか、帝国憲法以前から存在した。たった150年にすぎない近代の概念だけではなく、前近代までの千年以上の伝統も踏まえねばならない。皇室の長い歴史は、日本国憲法とも調和が可能である。  だから、日本国憲法に合わせて、皇室の歴史を捻じ曲げるのは、本末転倒だ。世の中には、「ジェンダー平等だから女系天皇」などと言い出す向きもある。だが、皇室は「ジェンダー平等」などという概念が登場する以前から存在する。  それを言うなら、民間人の女性は誰でも皇族になる資格がある。日本人なら誰もが知っているが、「正田さん」「小和田さん」「川嶋さん」は、今は皇族である。奈良時代の光明皇后をはじめ多くの先例があり、今や「常例」となっている。  一方で、民間人の男が皇族になった例は、一度もない。果たして、これを男女差別で測れるのか? 次元が違うとしか言いようがない。

有識者会議で示された第二案の解釈

 本題である。有識者会議は三つの案を示した。  第一案が、内親王・女王(つまり女性皇族)が婚姻後も皇族の身分を保持すること。  第二案が、養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とすること。本来ならば皇族として生まれてくるはずだったが、GHQの横暴により皇籍を剥奪された方々の子孫に親王宣下を行うことである。  まったくの一般人が皇族になった例は皆無だが、皇族の子孫が親王宣下された例は存在する。平安時代の第60代醍醐天皇などは、生まれた時は臣下で、後に親王宣下、そして即位されている。  さて、ここで肝である。養子ということは、誰のか? 皇室の歴史に照らせば、原則として上皇陛下か天皇陛下の養子となる。  有識者会議の清家篤座長は「この二つは、二択ではなく合わせて一つの案」と言い切った。どういうことか。解釈は一つしかない。既に他の媒体では公開情報なので、実名で書く。  敬宮愛子内親王殿下には、女性宮家を創設、結婚後も皇室に残っていただく。そこに、旧皇族の男系男子孫の方がご結婚、婿入りしていただく。その折には親王宣下により、「陛下の息子」として婿入りしていただく。  旧皇族の方に愛子殿下が嫁入りしても同じことだが、今の皇室の直系に誰よりも近い愛子殿下に、最近になって親王宣下された方が婿入りする方が自然だろう。第一案と第二案が合わせて一つの案とは、それしかない。  なお第三案として、「皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とすること」とあるが、これはご婚姻以外の方法で、皇統に属する男系の男子の方々に親王宣下を行うことだ。

なぜ今、皇位継承問題について決める必要があるのか

 そもそも、なぜ今の段階で皇位継承問題について決めておかねばならないのか。会議で出た意見を引くと「悠仁殿下が七十歳の時に子供が誰もいないと議論しても遅い」のである。  逆に何もしなくても日本の歴史を守れる方法がある。すなわち、悠仁殿下がご無事にご成長、ご結婚、即位、お世継ぎがお生まれになり皇位を継承する。有識者会議は「悠仁殿下の皇位継承をゆるがせにしてはならない」と断言した。当然だ。  ただ、このままでは悠仁殿下がご即位されたとき、皇族は一人もいなくなる。現に悠仁殿下はお命を狙われている。また、歴代奥方はバッシングを受けている。極端な重圧だ。だから、「悠仁殿下をお支えする皇族の確保」は喫緊の課題なのである。  ここで誤解があるようだが、「昨日まで一般国民だった人が今日から皇族で明日から天皇」は、悠仁殿下に不測の事態があった時の不吉な話だ。  大事なのは、愛子殿下と配偶者のお子様に、生まれた時から皇族としての御自覚を持って生きていただくことだ。  静謐な議論を望む。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

噓だらけの日本古代史噓だらけの日本古代史

ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作は、日本の神話から平安時代までの嘘を暴く!

1
2
【関連キーワードから記事を探す】