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ロシアのウクライナ侵略が日本に与える深刻な影響。他人事ではない3つの理由

日本にとっても他人事ではない3つの理由

米中と経済安保

評論家・江崎道朗氏

 ロシアによるウクライナ「侵略」でサプライチェーンへの対策が急がれるなか、江崎氏は特に日本への影響が大きいものとして、次の3点を挙げる。 ①電子工業に不可欠なパラジウムは、世界の4割をロシアが供給している。 ②半導体やその素材の製造工程に必要なネオンの7割はロシアとウクライナが供給している。チップをエッチングするレーザーにはネオンが使用されている。よって世界的な半導体不足がさらに深刻化していく恐れがある。 ③日本だけを見ても、’20年の原油輸入量の4.1%、LNGの8.2%、石炭の14.5%はロシアからだった。世界的にもエネルギー価格が上昇していくことになる。 「とにかく日本政府は重要な物資などについて、どれがどこの国に依存しているのか、民間企業の動向も含め、正確に把握してこなかったわけで、数年前にようやく状況把握を始めたばかり。今、経済産業省が慌てて点検をしている状況です」

重要物資の調達難に陥る懸念も

 武力による現状変更を阻止するため日本も欧米と協調して対ロ経済制裁に踏み切ったが、その報復措置としてロシアが輸出を止め、日本は調達難に陥る懸念もある。仮にロシアやウクライナからの原材料やエネルギーの輸入がストップした場合、現在の在庫でどれほどの期間を賄えるのか、またほかの国から代替調達することができるのか、などを探らなければならない。  これらの問題は欧米も同様だ。 「レアアースをはじめとする戦略物資をロシアと中国に依存している欧米、そして日本の弱点を踏まえたうえで、プーチン大統領は今回の挙に踏み切ったと言えるでしょう。要は、グローバルなサプライチェーンを欧米と日本とで維持できるよう、経済安全保障ネットワークを構築することが、中国とロシアに対抗するための有力な方策なのです」
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国際情勢を的確に分析するための情報源
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(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。

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