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「プーチンよ、嘘をつくな!」ロシア軍が住民虐殺を行った街・ブチャで見た遺族の涙

ロシア軍は、理由もなく人々を殺した

破壊されたブチャの住宅地

破壊されたブチャの住宅地

 ブチャ市内には、ロシア軍の攻撃の痕が生々しく残されていた。あちこちの住宅に銃撃や砲撃が行われ、ほほ全壊の家も数え切れないくらいあった。市内で一番大きなショッピングセンターも無残に破壊されてしまっていた。
破壊されたブチャのショッピングセンター

破壊されたブチャのショッピングセンター

 ブチャ市内でも特に被害が深刻だったのが、同市南部のヤブランスカ通り周辺だという。同地域の住宅街の裏の林の地面に何枚かシートが被せられていた。ロシア軍に殺された人々の遺体だ。その傍らに一人の青年が立ち尽くしていた。  アレクサンドルと名乗った青年は「私の父が殺されました」と語る。 「戦争が始まって、私は妻や子どもとともに市外に避難していました。そしてブチャに戻ってきて、父が死んだことを知りました。隣人たちの話によると、水を探しに家の外に出た際に、ロシア軍兵士らに見つかり撃たれたとのことです。なぜ、父は殺されたか。ただそこにいたからです。ロシア軍兵士らは、理由もなく人々を殺していました」
アレクサンドルさんの父親が、孫たちと海水浴に行った時の写真

アレクサンドルさんの父親が、孫たちと海水浴に行った時の写真

 アレクサンドルさんは、彼の父の写真を見せてくれた。孫たちと海水浴に行った時の楽しそうな写真。「ただ、ショックです」。そう言うと、アレクサンドルさんは目頭を抑え、涙をぬぐった。

毎日のように新たな遺体が見つかり、増え続ける犠牲者の数

アレクサンドルさんの父親の遺体

アレクサンドルさんの父親の遺体

 ブチャ市当局によると、当初300人あまりとされていた犠牲者の数はその後さらに増え、筆者の取材時点では400人を越していた。破壊された家々の瓦礫の下から回収されたり、殺されてすぐに埋葬されたりしたものなど、毎日のように新たな遺体が見つかるのだという。被害の全貌が明らかになるのは、これからのようだ。  ロシアのプーチン大統領は「ブチャで虐殺はなかった」と主張するが、人々の遺体を前にしてそのような詭弁は通じない。ロシア軍に占拠されていた今年3月の間は他の軍事組織はブチャには存在しなかったし、何より人々が「ロシア軍が殺戮を行っていた」と証言している。
破壊された家々を撮影していると、一匹の猫が近づいてきた

破壊された家々を撮影していると、一匹の猫が近づいてきた。人に馴れた猫のようで、どうやらお腹を空かせているらしい。飼い主は避難したのだろうか、殺されたのだろうか

 たとえ戦争中であっても、意図的に非戦闘員を殺害し、民間施設を破壊してまわることは国際人道法違反の戦争犯罪だ。日本も含め国際社会は「戦争犯罪を許さない」という断固とした姿勢を見せていくべきだろう。 文・写真/志葉 玲
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