更新日:2022年05月20日 19:08
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「ギターソロ不要論」は繰り返されてきた。花形楽器ゆえの苦悩とは

ギターソロ不要論は繰り返されてきた

 しかし、音楽史を振り返ると、この数年で初めてギターソロが憂き目を見ているわけでもないのですね。実は40年以上前からギターおよびギターソロ不要論は繰り返されながらも、したたかに生き抜いてきているのです。  最初は70年代後半。パンクムーブメントが“ギターソロの死”を宣告しました。象徴的な存在が、アメリカのパンクバンド、ラモーンズです。ギターソロはなし、一曲3分、使うコードはせいぜい4つまで。潔い姿勢でロックの初期衝動を追求し、ハードロックやプログレッシブロックのバンドが20分以上もギターソロを披露していたトレンドに反旗を翻しました。  一方で、ラモーンズがデビューした翌年、1977年はイーグルスの「Hotel California」がリリースされた年でもあります。1分近いギターのアルペジオが印象的なイントロ。曲の後半からは2分以上ものツインギターのソロがエンディングまで続く。問答無用のギターづくし。アンチへの強烈な返答に聞こえてきますね。  日本のロックギターの第一人者、Charの「気絶するほど悩ましい」がリリースされたのもこの年でした。

不要論が巻き起こっては、それを覆すヒット曲が生まれる

 つづく80年代。大量のヒット曲が生まれたシンセサイザー全盛の時代も、ふたたびギター不要論が持ち上がりました。でも実際はどうだったかというと、シンセポップと同じぐらいハードロックやヘヴィメタルが売れた時代でもあったのです。ヴァン・ヘイレンやボン・ジョヴィなどが次々とビッグセールスを記録。 「Jump」や「Livin’ On A Prayer」といった誰もが知っているヒット曲にも、当然ギターソロがあります。テキサスのブギーバンド、ZZトップもシンセサイザーを駆使しつつ、「Legs」や「Gimme All Your Lovin’」などの骨太なギターロックでチャートを席巻しました。  そして、このあたりから日本でもギターソロのあるシングル曲がヒットしだします。そのパイオニアが、BOØWY。1987年リリースの「MARIONETTE」は、布袋寅泰のギターを大々的にフィーチャーし、鮮烈な印象を与えました。    ハードロックが下火になった90年代も“ギターソロ不要論”が巻き起こりましたが、異なるジャンルで生き残っています。ブリットポップの雄、オアシスの「Don’t Look Back In Anger」に、グランジロックの立役者、ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」。形は変わっても、きちんと間奏のソロは残っていますね。  邦楽シーンでは、なんと言ってもB’z。ミリオンヒット15曲中、すべてにギターソロがある! 特に「Love Phantom」は、稲葉浩志のボーカルと同じくらい松本孝弘のギターが歌いまくる、忘れがたい一曲です。
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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